洋包丁の研ぎ方
洋包丁は欧州圏で生まれた包丁で世界中で幅広く使用せています。
片刃の和包丁とは異なり洋包丁は両刃で作られることが多く、食材に対して真っすぐに切ることが出来るので使い勝手が良く幅広い用途に応用出来ます。
そのため片刃の和包丁のような決まった用途ごとに使用するのではなく、多目的な用途で使える万能性が洋包丁の特徴です。
特に牛刀は万能性が非常に高く、和包丁を使用してきた和食の世界でも使用される料理人が増えてきており、和牛刀と言う包丁も新しく作られるようになってきまいた。
洋包丁とは
両刃とは
両刃はその名の通り両面から研がれている包丁で、両側から刃先に向かって丸みを帯びるように研がれているのが特徴です。
両側から研がれているため、包丁に対して刃先が真っすぐに向いているため食材を切る時も包丁が真っすぐに進むようになっています。
そのため自分の思うように刃を切り進めて行くことが出来る使い勝手の良さこそが両刃の一番のメリットになります。
また両刃は片刃とは違い刃先に厚みがあり、刃に耐久性が高いので刃こぼれにも強いのもメリットです。
左右対称ではない?
洋包丁は両刃に研がれているので、完全な左右対称になっていると思うでしょうが実は少し違います。
安物の包丁は別になりますが、本格的な洋包丁は左右の厚みが均一に研がれているわけではありません。
洋包丁の断面図を見ると刃を下に向けた場合、左面が少し平ぎみになっており、右面は逆に少し丸みを帯びて(ハマグリ刃)います。
これはなぜかと言いますと、刃を極力片刃に近づけた研ぎ方をしているのです。
片刃の構造と言うのは裏面(こちらで言う左面)が平(ベタ)になっているため、刃先まで丸みがなく非常に薄くなっている状態です。
そのため鋭い切れ味を出すことが出来る上、身離れの良い刃になります。
両刃の包丁も出来る限りその片刃の切れ味に近づけるためにこのような研ぎ方をしています。
右面も同じように薄く研げばさらに切れるのではと思いますが、そうしてしまいますと逆に刃が薄くなり過ぎてしまいますので刃こぼればかりする刃になってしまいます。
これでは両刃のメリットの一つが失われてしまいます。
洋包丁の造り(割込み包丁)などの種類によっては完全に両刃に研がないといけないものもありますので、両刃のすべてがこのように研がれているわけではありません。
研ぎの角度
決まった角度は存在しません。
洋包丁を研ぐ上で一番問題になるのが研ぎの角度になります。
これは非常に難しい問題で、結論から言いますと「決まった角度は存在しない」です。
元も子もない言い方に聞こえますが、切り刃がありそれによって決まった角度がある和包丁とはことなり、両面から研がれている洋包丁には砥石を当てる決まった箇所が存在しないのです。
そのため自分で研ぎの角度を設定して、研ぎ幅を決める必要があります。
それなのになぜ研ぎの角度について問題になるかと言いますと、角度によって刃の厚みが決まるからです。
包丁にとって刃の厚みは重要なポイントになっており、それによって切れ味などの刃の性質が大きく変わってきます。
簡単にいいますと、刃の角度を寝かせて鋭角に研ぎますと刃が薄くなります。
薄い刃と言うのは切れ味が鋭くなります、その反面衝撃に弱く簡単に刃が欠けてしまいます。
逆に刃の角度を起こして鈍角に研ぎますと刃に厚みが出ます。
この場合は刃こぼれに強くなりますが、切れ味の鋭さがあまり出ません。
この切れ味を重視して刃を薄く研ぐか、刃の耐久性を重視して刃に厚みを持たせるかは人によって好みが分かれるため、決まった研ぎの角度が決まっていないのです。
研ぎ慣れていないなら
とは言えこれは研ぎが上達した上級者が考えることで、研ぎ慣れていない初心者からすればそんな難しいことをいきなり言われても困るかと思います。
なので最初の内は研ぎの角度を10度~15度くらいにして研ぐのがいいと思います。
よく言われているのが硬貨が2枚重ねた時の角度くらいが理想です。
この角度が中間のバランスをとった角度になりますので、まずはこれを基準にして研ぎ慣れていく内に自分の好みの角度を見つけていくことをお勧めします。
片刃研ぎも有る?
洋包丁は基本的には両刃の包丁が主ですが、中には片刃研ぎになっている包丁もあります。
最初から片刃研ぎになっている「筋引き」「骨スキ」はもちろんのこと、両刃の牛刀を片刃にして研ぎ直す人もいます。
上でもご説明しています通り、両刃の包丁は裏面が少し丸みがかった平になっています。
この裏面を完全な平(ベタ)にしたものが片刃研ぎになります。
なぜ両刃の洋包丁をわざわざ片刃研ぎにするのかと言いますと、片刃のメリットである切れ離れの良さがあるからです。
切れ離れの良さ
片刃の良さの一つとして切れ離れの良さがあります。
片刃は刃の厚みが裏表で異なりますので、切った時に食材との間に空間が出来やすく包丁にくっつきにくくなっています。
お肉を切る時は特に刃にくっつきやすいので、筋引きや骨スキの精肉用の包丁はしのぎを付けた少し極端な片刃にしています。
研ぎ傷について
洋包丁を研ぐ上で研ぎ傷が気になると言う方もいられます。
こちらで研いだ包丁を見られて研ぎ傷が入っているのを見て研ぎ方がヘタクソだと言われたことも有りますが、これは上手い下手の問題ではなく洋包丁をきちんと研ぎますと研ぎ傷は出るものなのです。
なぜ研ぎ傷が出るかと言いますと、それは洋包丁の構造と研ぎの角度にあります。
まず洋包丁の構造として元の板厚自体が薄くなっている上、峰から刃先に向かって薄くテーパー状に研がれています。
簡単に言いますと、両側の側面は少し丸みを帯びていますがほとんど平(ベタ)に近い形状になっているのです。
そして研ぎの角度ですが、側面が平に近い状態になっている以上それに合わせた角度にするため刃を非常に寝かせた角度で研ぐことになります。
たとえ刃に耐久性を持たせるために刃を起こして研いだとしてもかなり刃が寝ているのです。
そのため包丁と砥石の接点が非常に大きく当たる上、研ぎ汁が出ることも相まってどうしても研いでいる側面にも研ぎ傷が出てしまいます。
ましてや刃を薄く研ごうと刃を寝かせて研ぎますとさらに大きな研ぎ傷が出ます。
もし研ぎ傷を出ないように研ぐのでしたら、刃を起こして刃先だけを研ぐ(小刃研ぎ)もしくは機械の研ぎ機だけで研ぐのでしたら研ぎ傷はほとんど出ることはありません。
しかしこのどちらも研ぎ方でも鋭い切れ味を出すことは出来ません。
もちろん大事な包丁ですし、新しい包丁でしたらなおさら研ぎ傷が気にもなるかもしれません、ですが包丁本来の切れ味を無視して見た目ばかり気にしては元も子もありません。
まずは包丁本来の役割である切れ味を第一に考えて研ぎをすべきだと思います。
その上でもし研ぎ傷が気になるのでしたら、研ぎ傷を耐水ペーパーなどを磨いて傷を消すことをお勧めします。
各洋包丁の研ぎ方
洋包丁で合っても種類によってや使い方によって研ぎ方が変わってきます。
堺一文字光秀の研ぎ職人が各種類の洋包丁に合った研ぎ方を一つ一つご紹介していきます。
牛刀の研ぎ方
ペティナイフの研ぎ方
筋引きの研ぎ方
洋出刃包丁の研ぎ方
骨スキの研ぎ方
著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)