メンテナンス

包丁は親から子へと受け継がれることもあるほど永く使える道具です。しかし、メンテナンスを怠ればすぐに傷んでしまうものでもあります。


大切な包丁を長く愛用するためのお手入れの仕方をプロが解説します。



なぜ包丁のメンテナンスや保管が大切なのか?

なぜ包丁のメンテナンスや保管が大事なのか


お客様からメンテナンスの依頼をお受けするときに、昔自分が結婚したときに購入した包丁や亡くなった親が大事にしてきた形見の包丁など数十年以上も昔から愛用されてきた包丁を預かる時があります。

それほど優れた包丁は一生ものになるだけでなく、次の世代へも引き継がれるほど永く使う事が出来る道具です。

しかし包丁について正しい知識があまりないまま使用することで包丁が錆びてしまったり、切っている最中に大きく刃こぼれしてしまったり、研ぎ方を誤って包丁の形を崩したりなど大事な包丁が一瞬でだめになってしまうこともあります。

料理をする人にとって包丁は毎日使うものですし、良い包丁を購入したのでしたら出来る限り長い間使っていきたいと思っているはず。

そのためには、包丁がだめになる原因を知り、場合に応じた対処方法を学ぶことが大切です。

包丁を育てる楽しみを知っていきましょう

包丁はなぜ切れ味が悪くなるの?


毎日料理する方は必ず包丁を使うはずです、当たり前ですが包丁は使い続けていくたびに切れ味がだんだんと落ちていきます。

でもなぜ包丁は切れなくなっていくのでしょうか?

その答えは簡単で刃先が摩耗してだんだん丸くなっていくから、包丁が切れなくなっていくのです。

一度切れなくなった状態の包丁を指の爪の上に滑らしてみてもらうと分かると思いますが、つるつる滑るだけで全然引っ掛かりがありません。

なぜ切れ味が悪くなるのか


では刃先が摩耗する原因は何なのか?

料理に使ってるのだから食材に決まっているだろうと思っている方が多いと思います。

でも食材は包丁と比べても意外と柔らかい物ばかりで、これが切れ味を悪くする一番の原因ではないのです。

では他に何が刃先を摩耗さしているのか、それはズバリ「まな板」です。


包丁が切れなくなる原因はまな板です


食材を切る時には、まな板の上で切るようにしている方が多いのではないでしょうか。

普段あまり意識をしていないかもしれませんが、これって実は食材だけでなくまな板も同時に切っているという事なのです。

じゃあなぜまな板は切れないかと言うと、それは食材と比べてはるかにまな板が硬いからです。

そのため柔らかい食材だけが切れるのですが、包丁は常に硬いまな板の上で摩耗し続けているので切れ味が悪くなっていくのです。

包丁の研ぎ方

包丁の研ぎ方



包丁が切れない状態とは刃先が丸まっているなら、逆を言えば切れる状態とは刃先が鋭利になっている状態の事です。

そのために切れなくなった刃を研ぎ直しするわけです。


ただ正しい研ぎ方を知らずやみくもに研いでも決して切れ味が戻ることは有りませんし、下手をすれば逆に包丁をダメにしてしまう恐れもあります。

まずは正しい研ぎ方を覚えてから研ぎを始めることで、大切な包丁をいつまでも愛着持って使い続けていくことが出来ると思っております。

最高の包丁に最高の研ぎ、この二つが合わさって初めて最高の切れ味が生まれるのです。

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和包丁の研ぎ方

和包丁のほとんどが片刃で作られている物が多く、それは切る食材を出来る限り綺麗な切れ口に見せるためです。

そして様々な食材を切れるよう、多種多様な形状の種類が多くそれに適した研ぎ方が存在します。

洋包丁の研ぎ方

洋包丁は和包丁とは逆に両刃に作られている物が多いですが、正確には左右対照に研がれているわけでは有りません

それは両刃でもあっても切れ味を重視するためのプロの研ぎ方があります。

家庭用(三徳包丁)包丁の研ぎ方

今まで包丁を研いだことがない、もしくはあまり研ぎに自信がない

そういった人に少し研ぎ方を簡単にした方法をご紹介します。

砥石の種類と選び方

砥石の種類と選び方



包丁を研ぐ上で欠かせないのが砥石になります。

ただ砥石と言っても荒さ(粒子)、素材、製法など多種多様な種類があってどれを選べばいいか分からない方も多いです。

まず研ぎを覚える前に砥石について正しく知っておかないといざ研ぎ始めても思うように上手く研げず切れ味がなかなか戻らないことも多いです。

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最初はどんな砥石を選べばいいの?

まず砥石には大きく分類して「人造砥石」「天然砥石」の二種類があります。

人造砥石にしても、粒子の荒さ(番手)によって砥石の種類が分類されており、また主原料の砥粒(研磨剤)も数多く存在し、それを製造する製法もどんどん増えて行っています。

天然砥石に至っては自然の石ですので、同じ山から採掘してきた砥石であっても同じ品質の物が存在しません。


砥石の種類をさらに細かく分類していきますと「荒さ(番手)」、「素材、製法」、「砥石のサイズ」の三つの要素に分けられます。

ただその中でも荒さ(粒子)、素材、製法など多種多様な種類があります。



研ぎの経験がある熟練の方でしたら自分に合った砥石はご存じの方も多いかと思います。

ですが、包丁を研いだ事のない初心者の方にはどのように違いがあるのか分からないかと思いますので、詳しくご説明します。

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砥石の荒さ(番手)の選び方

よく初心者の方から最初に持つ砥石の選び方を聞かれますが、まず砥石を選ぶ中で一番重要なポイントが砥石の荒さ(番手)です。


番手とは、砥石の粒度の粒子の大きさのことで、「#」の後に数字を入れることから包丁の世界では番手と呼んでいます。

この番手の数字が小さいほど粒度が荒くなり、逆に大きくなるほど粒度も細かくなります。


そしてその番手の違いによって「荒砥石」「中砥石」「仕上げ砥石」の三種類に分類されます。

荒砥石  中砥石  仕上げ砥石
#80~#400#1000前後#2000以上
刃こぼれ・型直しの時に使用する刃を付けるときに使用する小刃引きや裏押しに使用する

最初はどれを選べばいい?


それぞれに決まった役割がありますので、すべて揃えてもらうのが理想ですが研ぎ慣れていない内は三種類すべてを揃えると言うのはやはり大変だと思います。

まだ研ぎ慣れていない方や、初めて砥石を買われるのでしたら最初は「中砥石」を選んでください。

中砥石は全ての研ぎの基準となる砥石で、この砥石があれば包丁を切れるように戻すことが出来ます。

砥石の素材の選び方

人造砥石は基本的に三つの要素で構成されており、「砥粒(研磨材)」「結合材」「気孔」によって組み合わされています。

  1. 砥粒(研磨材)
    砥石の主原料となるもので、刃を研磨するのに必要な粒子でさまざまな種類がありそれによって硬度や粘りが変わります。
  2. 結合材
    砥粒同士を結合保持する役割があり、ボンドとも言われることがあります。
  3. 気孔
    砥石の中にある砥粒と結合剤の間の隙間で、研いだ時にでる切りくずを一時的に溜めて排出してくれる役割があります。

この三つの要素の中で重要になってくるのが「結合材(製法)」になります。

結合剤は砥粒を結合するだけの物と思われていますが砥粒と同じくさまざまな種類がある上に、砥石の性質を大きく左右するのはこの結合材によりもので、各砥石メーカーも結合材による製法が最も重要視しています。

その製法ですが、代表的なものが「ビドリファイド」「レジノイド」「マグネシア」の三種類になります。

製法特徴用途
ビトリファイド可溶性粘土や長石などのセラミック質、ガラス質を1000度を超える高温で焼き固めたもの・砥石の中で最も研削性があり、高い研磨力が最大の特徴。

・気孔が多くあり、表面の目詰まりが少ない。
荒砥石に最適
レジノイド

フェノールやエポキシなどの合成樹脂を200度前後の比較的低温で焼き固めたもの・吸水性が低く、水を吸わないので研ぐ前に水に浸ける必要がない。

・砥石の弾力が有り、研いだ時の刃当たりが良くきめ細やかな仕上がりになります。
中砥石から仕上げ砥石に最適
マグネシアマグネシアセメントの結合材を焼き固めるのではなく、常温乾燥で練り固めたもの・研削性が高いうえ、天然砥石のようなきめ細やかな仕上がりに研ぎ上げられることが出来る。

・レジノイドと同じく吸水性が低いので、研ぐ前に水に浸ける必要がない。
荒砥石から仕上げ砥石まで全般の番手に最適

最初はどれを選べばいい?

初めて砥石を買われるのでしたら、はじめは「ビトリファイド」を選ばれるのがいいと思います。

実は砥石は気温の変化や湿度の変化に弱く、それを知らないまま砥石を使っていくと砥石が割れてしまったり、ヒビが入ったりしたと聞く事が良くあります。

その中でもビトリファイドの砥石は経年変化が少なく、砥石が割れることが少ないので初心者の方には比較的扱いやすくお勧めです。

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意外と知らない「まな板」の重要性

意外と知らないまな板の重要性

包丁を大事に使っていくためには欠かせないのがまな板になります。

ですが、料理をする上で包丁にこだわりを持つ方はたくさんいますが、まな板にこだわる方は意外と少なく軽視される傾向にあります。

なぜまな板がそこまで重要になってくるかと言いますと、包丁の「切れ味の持続性」に大きく関わってくるからです。

食材を切っている時をイメージすると、まな板の上で包丁をトントンと食材を切っていると思います。

普段あまり意識をしていないかもしれませんが、これって実は食材だけでなくまな板も同時に切っているという事なのです。

じゃあなぜまな板は切れないかと言うと、それは食材と比べてはるかにまな板が硬いからです。

そのため柔らかい食材だけが切れるのですが、包丁は常に硬いまな板の上で摩耗し続けているので切れ味が悪くなっていくのです

包丁の切れ味を悪くする一番の原因は実はまな板になるのです。

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包丁に合ったまな板の選び方

上に書いています通りまな板は包丁の使い勝手や寿命に大きく関わることなので、まな板選びはこだわったものを選んでいただきたいです。

特に包丁を長く使っていただくには良いまな板が欠かせません。

まな板の素材は「木製まな板」「プラスチック製まな板」「ゴム製まな板」の三種類があります。

それぞれに特徴がありますが、色々な素材のまな板がある中で包丁に最も最適な素材を選びのでしたら「木製まな板」になります。

包丁に最適な木製まな板。

包丁には木製のまな板が最適です。



色々な素材のまな板がある中で包丁に最も最適な素材が木製のまな板になります。

木製まな板の一番の特徴と言えば、柔らかな弾力が有り食材を切った時の刃当たりが良いことです。

そのため刃が傷みにくくなるのはもちろんのこと、切った時の手首への負担も少なく疲れにくいと言われています。

プラスチック製などの樹脂製は非常に硬質な素材のためコンコンと刃を弾いてしまうため切れ味がすぐに落ちてしまのに対して、木製のまな板はトントンは優しく刃を受け止めてくれるため特に刃の持続性に関しては非常に優れております

また食材を切った時の感触がとても心地よく、料理する楽しみが増えるのも木製のまな板の良いところです。

衛生面など使い勝手の良さならプラスチック製、ゴム製のまな板

それでも木製のまな板はメンテナンスが大変なので扱いやすいほうがいいと言う方にはプラスチック製、ゴム製のまな板があります。

どちらもメンテナンスがし易いく、漂白や除菌することも出来ますので衛生面では木製よりこちらのほうが優れています。

まな板のお手入れ

いいまな板を手に入れたらいつまで愛用したいものですよね。

特に木製のまな板は、使用中または使用後にも正しい手入れがあり、それを怠ってしまいますと黒ずんできたり、菌が繁殖したりと見た目にも不衛生なので注意が必要です。

そのためそれぞれにあったまな板のお手入れ方法を知って、包丁と同じように大事にしていきましょう。

包丁のお手入れ・保管方法

使い終わった後の包丁のお手入れを誤ってしまう事によって、包丁の寿命を縮めてしまうことがあります。

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正しい包丁の処分方法はご存じですか?比較的大きな刃物ですので、捨てる時には、安全を確保した状態で捨てる必要があります。安全な包丁の捨て方をご紹介します。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
〒542-0075 大阪府 大阪市中央区難波千日前 14-8