切れなくなる理由
包丁が切れなくなるのはどうして?実は包丁が切れなくなる原因は一つではありません。切れないときには、原因に応じた対処をする必要があります。堺一文字光秀が「包丁が切れない」の解決法を語ります。
切れ味が落ちない包丁はない
包丁は毎日使う場合方も多いですから、出来れば切れ味がいつまでも続けばいいと思いますが、残念ながら切れ味が落ちない包丁は存在しません。
そのため包丁を使い続けるには、落ちた切れ味を戻すべく、研ぎをすることになります。
ただ、お客様から「研いだのに切れない」「研いだ時の切れ味がだんだんと悪くなってきた」など問合せをいただくことが多々あります。
最初は良く切れていた包丁がなぜ切れなくなるのか、研いだのに切れないのはどうしてなのか。
少しでも切れ味を長持ちさせるために、その原因を詳しく解説していきます。
包丁が切れなくなるとは?
なぜ包丁は切れなくなっていくのでしょうか?
その答えは簡単で刃先が摩耗してだんだん丸くなっていくから、包丁が切れなくなっていくのです。
一度切れなくなった状態の包丁を指の爪の上に滑らしてみてもらうと分かると思いますが、つるつる滑るだけで全然引っ掛かりがありません。
このような状態では食材を切っても同じで、表面の上をつるつる滑るだけで食材に引っ掛かってくれないので中へ切り進んでいきません。
これが一般的に言う、「包丁が切れない状態」です。
研いでいるのにすぐ切れなくなるのはなぜ?
なぜ刃先が摩耗するのか
刃先が摩耗する原因は何か?料理に使ってるのだから食材に決まっているだろうと思っている方が多いと思います。
たしかに、肉や魚を切ったり、野菜を切ったり、時には硬い骨を切ったりとするのだから刃先が摩耗していくのはあたり前ですね。
でも食材は包丁と比べても意外と柔らかい物ばかりで、これが切れ味を悪くする一番の原因ではないのです。
一番の原因はまな板です。
では他に何が刃先を摩耗さしているのか、それはズバリ「まな板」です。
食材を切る時には、まな板の上で切るようにしている方が多いのではないでしょうか。
普段あまり意識をしていないかもしれませんが、これって実は食材だけでなくまな板も同時に切っているという事なのです。
じゃあなぜまな板は切れないかと言うと、それは食材と比べてはるかにまな板が硬いからです。
そのため柔らかい食材だけが切れるのですが、包丁は常に硬いまな板の上で摩耗し続けているので切れ味が悪くなっていくのです。
まな板を選び直してみませんか?
包丁の切れ味を悪くしている原因がまな板ならば、そのまな板自体の素材を包丁に優しい物に替えてみるのも一つの方法です。
今はプラスチック製のまな板を使われている方がほとんどだと思います。
確かに衛生的なので料理には向いていますが、プラスチック製のまな板は非常に硬質なものが多く包丁に与えるダメージは大きいです。
それを木製のまな板に替えるだけでも切れ味の持続性が大きく変わってきます。
木製のまな板は切った時に刃をやさしく受け止めてくれるので、刃のダメージも少なくなりますし切っている感触もソフトなので切っていて心地よさがあります。
特に桧や銀杏などの油分の多い木材は復元力が高く刃当たりが良いので包丁との相性を考えると木製のまな板をお勧めします。
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研ぎ方が違っている
包丁が切れない状態とは刃先が丸まっているなら、逆を言えば切れる状態とは刃先が鋭利になっている状態の事です。
そのために切れなくなった刃を研ぎ直しするわけです。
しかしただ研いだからと言って元通りに切れ味が戻るわけでも、切れ味が長続きするわけではありません。
研ぎと一括りにしていますが、砥石で研ぎ事以外にも今はロールシャープナーや研ぎ棒などの他の道具も増えており色々な研ぎ方が出来るようになってきました。
ただこれは砥石で研ぐのとは異なり丸くなった刃先を荒いギザ刃にして切れるように見せかけているだけです。
これだけでも切れ味が少し元に戻ったように思えますが、荒いギザ刃は摩耗に弱くすぐに切れ味が悪くなってしまいます。
また砥石で研ぐにしても研ぎ方を誤ればやはり切れ味を長持ちさせることは難しくなります。
切れ味をもどすためには刃先を鋭利にするのですが、刃先だけを鋭利にした鈍角な刃は切れ味がすぐに落ちる厚い刃になってしまいます。
包丁はテーパ形状になっており刃先に向かっていくほど刃は薄くなっています。
そのためその形状に合わせた研ぎの角度で研がないと刃に厚みがどんどん出てしまいます。
包丁の切れ味にとって刃の厚みは非常に大事な要素なので、刃の角度を誤って研いでしまいますとどんどんと切れ味が長持ちしていかなくなります。
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切り方が荒い
きちんと研いでいるのにすぐに切れ止むという場合は切り方が荒いのかもしれません。
上に書いています通り、切れ味を悪くしてしまう原因はまな板に刃先が当たる衝撃で摩耗さしてしまうからです。
そのまな板の上で包丁を強い力で切り続けていきますとその分刃先に強い衝撃を与えてしまいますので切れ味が早く止まってしまう可能性があります。
またこの場合は刃こぼれし易い原因にもなりますので、あまりまな板に叩き過ぎない様に切ったほうが良いです。
包丁自体が良くない
身も蓋もないですが、よく切れる、切れ味が長持ちするは包丁の性能によるところが大きいです。
近年は工業化もあって包丁も機械で大量生産できるようになったため、品質の良い包丁でも安くで購入できるようになってきました。
それ自体は良いことだと思いますし、実際にこの金額でこの品質が出せるのか感じることも多いです。
しかし切れ味の事で悩んでいる方には、やはりきちんとした刃物鋼を使用して、職人が手間をかけて作った包丁でないとこの悩みは解決しないかと思います。
切れ味が落ちない包丁はありません。
包丁は毎日使う場合方も多いですから、出来れば切れ味がいつまでも続けばいいと思いますが残念ながら切れ味が落ちない包丁は存在しません。
しかし切れなくなる原因を正しく知れば少しでも切れ味を長持ちさせることが出来ます。
そのために今自分が使っています包丁の使い方やメンテナンスを覚えていつまでも包丁を大事にしていきましょう。
研ぎが原因の場合はプロに研ぎを依頼することもできます。
研ぎ味がすぐに落ちてしまうことでお困りの方の中には、普段はシャープナーを使用していて、砥石を使った研ぎ方がよくわからないという方もいらっしゃると思います。
実際、定期的に研ぐのは手間もかかりますし、研ぎに慣れない間は「砥石を使うことでより切れなくなった」ということもザラにあります。
そこで、普段はシャープナーを利用して包丁の切れ味を保ち、定期的に包丁屋さんに研ぎを依頼するという方法があります。(年に一度しっかりと研いでもらうだけで、切れ味は全然違います。)
ただ、常時30分以内に返して貰えるような研ぎ屋さんには注意してください。
早く仕上がる場合は機械での研ぎの場合が多いです。機械工程が多めの研ぎサービスは、余計に削ったり、傷がたくさんついてしまう可能性があります。
お時間はいただきますが、我々は荒砥石から仕上げ砥石まで6種類の砥石を手で当てます。
多くの新品よりも切れ味が良い状態でお返しできているはずですので、ご興味ある方は是非お問い合わせください。
著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)