包丁の錆び
毎日料理する方でも、趣味でたまに料理する方でも使い終わった後にはきちんとお手入れされているかと思います。
その中でも包丁の「錆び」にはより注意を払っているのではないでしょうか
それでも毎日きちんと洗っているはずなのに翌日に少し錆びていたり、きちんと手入れをして保管していたはずの包丁が真っ黒に変色していたなど手入れに苦労されている方がたくさんいます。
包丁は食材を切るものなので、それが錆びてしまっていますと使う事にも躊躇してしまいます。
ではいったいなぜ包丁は錆びてしまうのか?その原因をご紹介します。
包丁はなぜ錆びるのか?
包丁が錆びる原因の犯人は主に二つで「水」と「酸素」になります。
逆を言えば二つのどちらかがなければ包丁が錆びることはほとんど有りません。
錆びは、対象となる金属(鉄)の表面上で水と酸素が酸化することで起こる化学反応です。
もともと鉄は人が使いやすいよう加工された金属で、錆びると言うのは元の自然な姿である鉄鉱石(酸化鉄)に戻ろうとしている自然現象にすぎません。
ただ鉄にとっては自然な姿に戻る現象であっても、人にはとても困る事です。
一度包丁が錆びてしまいますと切れ味が悪くなったり、刃こぼれしてしまったりすることもある上に、切った食材に錆びが色移りしてしまい見栄えの悪い料理になってしまう恐れもあります。
錆びの種類について
錆びとひとくくりにいっても、金属の種類や状況によっていろいろな錆び方が存在します。
その中で包丁では主に二種類の錆びがあります。
赤錆び
大体の方が錆びをイメージする時に思い浮かべるのがこの赤錆びだと思います。
赤みがかった茶色の色をした錆びで、触ると表面がボロボロくずれるようになっています。
これは鉄そのものが腐食してしまっている悪性の錆びでこの状態まで錆びを進行しますと包丁に大きなダメージを与えてしまします。
包丁をメンテナンスしていく上で赤錆びを出さない様にしてもらうことが一番大事な事です。
包丁は赤錆びには絶対しないでください!元に戻りません!
黒錆び
一方黒錆びは錆びと言っていますが、赤錆びとは違い金属的には非常に安定している状態で逆に良性の錆びと言われています。
黒錆びは鉄の表面に酸化膜を作ってコーティングしてくれているので、錆びが広がることも、赤錆びのようにぼろぼろに崩れる心配もありません。
そのため黒錆びになった状態は赤錆びになることが少ないので、昔から鋼の包丁をうまく扱うには黒錆びになるようメンテナンスすると言われています。
ただ黒錆びは自然に発生することはほとんどなく、人工的に加工しないと発生しません。
ステンレス鋼でも錆びるの?
ステンレス鋼の包丁は未だに全く錆びないと思っている方が多くいます。
ですが、ステンレス鋼はあくまでも錆びにくいだけであって、手入れを怠ると錆びることがあります。
そもそもなぜステンレスは錆びにくいのか
ステンレスは主成分である鉄にクロムを10.5%以上を含有した合金鋼で耐食性の高さが特徴です。
上記に書いています通り、錆びは鉄が酸素と水によって酸化することで起きるのですが、ステンレスはクロムを含有することによって鉄の表面に不動態皮膜と言う薄い膜を形成します。
この膜が鉄より先に酸素と結びつく事(酸化被膜)から錆びるのを防いでくれています。
しかしその不動態皮膜は1μの100分の1以下と非常に薄い膜なので、外部からの刺激され続けることによって膜が破壊されることで錆びが発生することもあります。
ステンレス鋼の錆びの原因とは
水や汚れが常に付着している
一時的に水分や汚れなどが付着しているだけでしたら問題はありませんが、常に表面に付着している場合は不働態皮膜は破壊されてしまい錆びることが有ります。
塩分の付着
海岸地帯では良く金属が錆びているのを良く見ますが、海水に含まれる塩分が水を吸水しやすくなり錆びを促進してしまいます。
ステンレスは他の金属よりもはるかに塩分には強い耐性をもっていますが、それでも表面が塩分にさらされ続けると錆びが発生します。
もらい錆び
もらい錆びとは、他の金属と接触しあうことによって起きる錆びの事です。
特に錆びた金属と接触していますと膜が破壊されやすくなり、錆びが発生します。
ステンレスの錆びは非常に厄介です。
ステンレスの包丁の錆びを見ていて、非常に多いのが孔食という錆び方です。
ステンレスの錆びは膜が部分的に破壊されることによって錆びが発生しますが、孔食はその錆びが金属の中へと浸透していきます。
この錆びは非常に厄介で包丁に大きなダメージを与えます。
浸透した錆びは包丁を突き抜けて虫食い状態のように穴が空いた状態になり、研いでも刃が常に欠けた状態で刃が付きます。
こうなってしまいますと元通りにはなりません。
そのためステンレス鋼の包丁でもきちんと手入れをしていただかないと場合によっては鋼以上に大きなダメージになる事もありますので注意が必要です。
錆びた包丁は出来るだけ早く取り除きましょう
包丁を使う環境は実は金属にとって非常に過酷な環境だと思います。
料理の時は常に水を必要としますし、切るものには塩分や酸性度が高い食材を切ることもありますので包丁を錆びささないというのはとても難しいことです。
そういった意味では包丁が錆びるというのは仕方ないことかもしれません。
ですが、錆びが発生すると消えることは絶対にないので見つかり次第早く錆びを落とすようにしましょう。
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著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)