刺身包丁(柳刃包丁)の研ぎ方
柳刃包丁は刺身を引くときに使う包丁です。
刺身は一回で引き切らないと切った断面に段が出来てしまい見栄えが悪くなります。
そのために刃の長さと鋭い切れ味が必要になります。
これからご説明する研ぎ方は初心者の方を基準としたもので、各工程を詳しくご説明しています。
研ぎ慣れた方はこの工程通りに進めなくても、ご自分の判断で工程(小刃研ぎなど)を省略して進めて行っても良いと思います。
柳刃包丁を研ぐ上で大事なポイント
切り刃はしっかりと研いで薄さを維持してください。
柳刃包丁は切れ味が求められる包丁ですので、切り刃に厚みがあると鋭い切れ味が出ませんので切り刃全体の薄さを常に維持してください。
逆反りのコンコルドには注意です。
柳刃包丁は刃厚が薄く、長細いのでアールの箇所が逆反りのコンコルドの形になりやすいので注意してください。
裏押しは最小限にとどめる
裏を研ぎすぎると平面の幅が広がりますので、鋭い刃が出しにくくなる上、身離れも悪くなりますので裏押しは最小限にとどめてください。
柳刃包丁は刃に厚みが出ないように切り刃を常に薄い状態にしておくことが重要です。
また荒目の砥石だとかえりのざらつきが大きいので、仕上げ砥石まで研ぐことをお勧めします。
包丁状態を確認する
まず研ぎを始める前に包丁全体を目で確認してください。
包丁研ぎはただ切れ味を戻せばいいという訳ではなく、包丁の正しい形を維持するためにも研ぐものです。
それを意識しないまま研ぎ進めていくと包丁の形が崩れて包丁の寿命が短くなります。
そのために必ず刃の状態を確認する癖をつけてください。
- 刃先の刃線が崩れていないか確認する。
- しのぎ筋が崩れていないか確認する。
- 切り刃の厚みを確認する。
- 裏スキの状態を確認する。
丸くなった刃先を研ぐ
小刃研ぎをします。
切れなくなった状態とは刃先が丸まった状態です。
まずそこを直すために刃を45度に立てて刃先のみ(小刃研ぎ)をカエリが出るまで研ぎます。
使用する砥石は中砥石(#1000)を使用します。
もし包丁に刃こぼれや型崩れが有る場合はこの段階で修正する必要があります。
そのためきちんと包丁の形が元に戻るまで研ぎ続けてください。
刃先に二段刃が出来ます。
刃を立てて研ぐと刃先に小さな二段刃が出来ます。
目で確認しますと光の加減で刃先に白い線が見えますが、それが刃先が二段になっておりこれを「小刃」と呼んでいます。
この小刃(二段刃)が一番刃先の先端になり、ここを基準に研ぎ進めて行きます。
この小刃があることによって、この先研いでいく箇所と刃先の状況が分かりやすくなります。
そして小刃を最初に付けて行くことで、研ぎ進めたときに刃先が薄くなり過ぎないためにも最初に小刃付けすることをお勧めします。
荒砥石で研ぐ
小刃(二段刃)が消えるまで研ぐ。
この二段刃の状態ですと、刃先が厚いのでこのままでは鋭い切れ味にはなりません。
そのため荒砥石でしっかりと二段刃が消えるまで研いでいきます。
切り刃全体に当てることを意識して常に目で確認しながら研いでください。
柳刃包丁は切り刃に厚みが残ると鋭い切れ味が出ませんので、しっかりと切り刃全体を研いで刃を薄くしてください。
しのぎを崩さない様に注意が必要です。
この時に注意していただきたいのが、和包丁(本焼きを除く)は鋼と軟鉄の合わさった包丁ということです。
切れ刃部分も2/3は軟鉄です。そこを均一の力で研ごうとしますと軟鉄部分ばかりが研げてしまいしのぎ筋が崩れてしまいます。
一度しのぎ筋が崩れてしまいますと、元通りに戻すのは非常に困難ですので注意してください。
上手く研ぐコツ①
切り刃全体を綺麗に当てるコツは、左指で刃先を砥石に押さえつつ、柄を握っている右手首を少し前にひねるイメージです。左指の力が強すぎると刃先が研げ過ぎてしまいますし、右手首をひねりすぎるとしのぎ筋が崩れますので注意してください。
おすすめの荒砥石
中砥石で研ぐ
ここから本格的に刃を付けていきます。
荒砥の時と同じく、中砥石で刃を立てて軽く小刃引きをしてください。
ここで強く小刃引きをすると刃が厚くなりますので軽い力で小刃引きしてください。
荒砥の研ぎ傷を消す。
荒砥石で研いだ切れ刃の表面は非常に荒くなっています。
中砥石でその研ぎ傷が消えるまで磨いてください。
刃は非常に薄くなっている状態ですので、刃先を研いでしまいますとカエリが簡単出て刃が減ってしまいますので刃先まで研がない様にしてください。
切れるように刃付けする。
出刃包丁の研ぎとは違い、柳刃包丁は切れ味が求められる包丁です。
中砥石で研ぐ段階ではあまりハマグリ刃を意識すると刃に厚みが出るので、切れ刃全体に砥石がきちんと当てることを意識して研いでください。
刃先に出来た小刃が消えるまでしっかりと研いでください。
切っ先のコンコルド(逆ぞり)には注意です。
柳刃包丁を研ぐ時に気を付けていただきたいのが切っ先の形を崩さないことです。
柳刃包丁は刃が薄く、長細いので切っ先の先端がコンコルドのように逆そりになることが多いです。
これは切っ先まで砥石をきちんと当てれていないのが原因です。
切っ先に砥石が当たるように柄を少し持ち上げて研いでください。
刃先の小刃を確認する。
目で刃先全体を確認して小刃が消えているかを確認してください。
もし小刃が残っている箇所が有りましたら、そこ箇所に左指を押さえて研いでください。
小刃が消えている状態を確認出来ましたら基本的にはこの段階でも切れる刃は付いています。
中砥石まででも切れる刃は付いていますが、柳刃包丁はより刃のざらつきがないほうが刺身を切った時には切れ口が綺麗になりますのでより切れ味を良くするために仕上げ砥石でも研ぐことをお勧めします。
おすすめの中砥石
仕上げ砥石で研ぐ
中研ぎの時と同じように、仕上げ砥石で軽く小刃引きをします。
中砥石の研ぎ傷を消す。
より切れ味を良くするために仕上げ砥石で研いでいきます。
まずは切れ刃全体に出来た中砥石の研ぎ傷を仕上げ砥石で磨いていきます。
カエリが出てしまいますので刃先は研がないでください。
おすすめの仕上げ砥石
仕上げ研ぎをする。
刃先の小刃が消えるまで研いでください。
柳刃包丁はこの仕上げ研ぎの段階でハマグリ刃を意識して研ぎますので、中砥石で研ぐ時より少し刃を起こして研いでください。
上手く研ぐコツ②
刃先に上手く砥石を当てるコツは、左指は刃先を押さえつつ、柄を握っている右手首を内側に返す感覚で研ぐことです。そうすることによって少しだけ刃が起きますので刃先に当てやすくなります。
裏押しをする
仕上げ砥石を使う。
切れ刃を研いだ時に出たかえりを取るために裏面を研ぎます。
和包丁の裏は凹んで(裏スキ)おり簡単に刃先に当たる構造になっております。
使用砥石は仕上げ砥石だけで大丈夫です。
ベタに砥石を当てる。
左手に持ち替えていただき、裏面全体を砥石に当ててください。
必ず裏面全体を砥石に当ててください、刃を起こして角度を付けないでください。
裏押しをするときは必ず水平な砥石を使ってください。
上手く研ぐコツ③
裏を均一に当てるコツは、刃を押さえる指(右指)を刃のセンターに置く事です。
小刃引きをする
この時点で切れる刃は付いておりますが、この状態は刃先が薄すぎて刃こぼれがしやすくなります。
そのため最後にも小刃引きをして刃先に強度を持たせることをお勧めします。
刃を立てて軽く小刃引きをする。
使用する砥石は仕上げ砥石が理想です。
もし仕上げ砥石がないのでしたらお持ちの砥石の中で一番細かい砥石を使用してください。
その場合はあまり力を入れて小刃引きすると刃厚くなるので軽い力で引いてください。
刃を45度くらいに立てて、刃先全体をかえりがでるまで軽く研いでください。
刃先を確認して全体に白い線(小刃)が出来ているか確認してください。
上手く研ぐコツ④
柳刃包丁は小刃が厚いと切れ味が鈍ってしまいますので、1回~2回くらいで小刃を引けるようになれば切れ味と刃の耐久性を両立することが出来ます。
最後に裏に出たカエリを取るために同じように裏押しをしてください。
新聞紙で試し切りをする
研いだ包丁がきちんと刃が付いているか新聞紙で試し切りをして切れ味をチェックしてください。
新聞紙がスムーズに切れましたらきちんと刃が付いています。
もし新聞紙が引っかかる箇所があったらその箇所の刃はまで研ぎきれていません。
柳刃包丁は試し切りで引っかかりがあると、刺身を引くときにも同じように引っかかりますので切れ口の見た目が悪くなりますので注意してください。
研ぎ方について質問があるなら
上の通り研いでいるのに上手くいかない。
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著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)