日本鋼(SK4鋼)
クラシックな日本製鋼
SK4鋼は、戦後から普及しはじめた洋包丁で長く日本の料理人を支えた素材です。
日本製の鋼として普及し、リーズナブルで研ぎやすさも併せ持つSK4の包丁は今でも人気です。
クラシックな日本の包丁はこの素材で作られていることが多く、単に「鋼」「SK鋼」と称されることも多いです。
日本鋼という正式な鋼材名は存在しない
ちなみに「日本鋼」という鋼材はありません。日本製の鋼、ということ以外は何の情報も読み取れません。
しかし鋼材の価格が高い白紙、青紙などを使用していれば商品名で示唆されるケースが多いので、
多くの場合「日本鋼」と表記されている場合はSK4もしくはそれに準ずる硬度や成分と思われます。
※メーカーや職人が公言していない以上、他メーカー「日本鋼」表記の包丁を研いだ限り、になります。悪しからず。
古くから未だに鋼材の名前をあまり公にしない包丁店、職人さんは未だに多く、これは鋼材よりも焼入れや成型、研磨工程が実力に大きく影響するに関わらず、鋼材名だけで品質を判断されてしまうことを危惧してのことです。
鋼材マッピング図から見る日本鋼(SK4)
まず、鋼材が包丁の実力にどう影響するかを把握しておきましょう。
| 鋼材 | 熱処理・鍛冶 | 刃付け | 柄つけ |
切れ味 | ○ | ◎ | ◎ | |
バランス | | △ | △ | ◎ |
メンテナンス性 | ◎ | ○ | ○ | |
上記の通り、
・鋼材は切れ味とメンテナンス性(研ぎやすさと錆びにくさ)に大きな影響を与える
・切れ味には鋼材だけでなく熱処理、刃付けも大きな影響を与える
・包丁の実力は重量のバランスやメンテナンス性も合わせて評価する必要がある
ということは理解しておきましょう。
上記の鋼材マッピングで見ると、こういったポジションになります。
日本で製造される鋼の包丁の中では安価な部類に入りますが、古くからこの鋼材で包丁を作ってきたメーカーは工程に手間をかけている傾向にあり、リーズナブルで研ぎやすい包丁として今でも人気があります。
成分表から見る日本鋼(SK4)
和食用の包丁で人気のある日立金属の白二鋼に比較すると、脆化の原因になるリンや硫黄の含有が多いことがわかります。
ただ、刃の硬度(切れ味)を決定づける炭素の含有率が0.9以上となっており、これはここには掲載しておりませんが普及する6A(0.55-0.65)や8A(0.7-0.8)のステンレスの包丁より高いことがわかります。
日本鋼の包丁を購入する際の注意点
注意点はまず第一に錆びることです。鋼の包丁なので当然ですが、使ったら洗剤で洗い、水気をよく切って乾燥させましょう。
そして、この鋼材で作られた包丁は往々にして最終刃付けが施されていないことが多いです。
なぜならこちらの包丁は良くも悪くも数十年前から基本工程が変わっておらず、最終刃付けは使い手のしごととして残されているケースがある為注意したいところです。
※戦後から平成初期までは、最終刃付けは料理人が好みに応じてするものというのが一般常識でした。この時代、価値観で作られたものだからこそリーズナブルで良い包丁が流通していたとも考えられます。
まとめ
・「日本鋼」という規格名、鋼材名は存在せず、SK4が使われていることが多い ※例外あり
・SK4は研ぎやすく、硬度もある程度持つリーズナブルな素材
・最終刃付けはされていない状態で売られていることが多い
SK4の包丁はこちら
著者紹介About the author
堺一文字光秀
田中諒
「切れ味で、つなぐ」堺一文字光秀三代目当主。 職人の技術と歴史、そして包丁にかける思いを皆様に届けて参ります。 辻調理師専門学校 非常勤講師 朝日新聞社 ツギノジダイ ライター
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)