良い包丁を使う理由

包丁はあなたの料理人生そのもの。プロ用包丁から家庭用包丁まで、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が良い包丁とは何か、について語ります。

なぜいい包丁を使うのか

そもそも、なぜいい包丁を使うのでしょうか?単に「ほしいから」だけでは納得してくれない親方やパートナ―がいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?決して安い買い物ではありません。改めて、良い包丁を使うメリットについてまとめてみましょう。

食材のポテンシャルを引き出せる

なんといっても、良い包丁を使うことで食材のポテンシャルが引き出せます。例えばトマトの輪切りにする際、切れ味が悪い包丁を使うとどうなるでしょうか。

切れることは切れます。しかし、刃が皮の上を滑ってしまい、力が入ることで断面が潰れ、ゼリー状の種が流れ出します。他の食材にかかり見た目が悪くなるばかりでなく、本来の味や栄養素までが劣化してしまいます。

切れ味が良い包丁を使うと、一回ですっと切れ、輪切りの中に種は収まったままです。味や栄養素も保てるばかりでなく、切った面の繊維が荒れないため水分を閉じ込め、美味しく食べられる時間が伸びます

料理の自由度が上がる

切れ味の悪い包丁は、肉や魚は筋肉の繊維に沿ってしか切れません。それ以外の切り方だと断面を潰してしまいます

切れ味の良い包丁は切り方の幅が広がります。例えばお刺身の角を立たせる野菜の断面を潰さずに大小形問わず切り分けられる。 こういったことは切れ味の良い包丁ならではできることです。

効率が良くなる

切ったつもりがまだ繋がっていた、鶏肉がぐにぐに動くだけで刃が進まない、トマトの汁がこぼれる。ストレスを感じた経験はありませんか?思い出すだけでイライラするという方もいるかも知れません。

すっと食材が切れてくるのは本当に気持ちが良いです。プロの料理人にとっても一日の作業を通して考えると精神的な負担だけでなく、作業面の効率でも大きな差が出ます。

コストパフォーマンス

良い包丁は、長く使えます。

安い包丁は切れ味がすぐに落ちてしまうものが多く、研ぎと購入のペースが上がります。良い鋼材を使ってしっかり鍛造、熱処理された包丁であれば一生モノに成り得ます。実際に50年前の研ぎ無料券と年代モノの包丁を修理にお持ちする方もかなりいらっしゃいます。長持ちする包丁を買うほうが、長い目で見たコストパフォーマンスが良いと言えます。

料理がどんどんうまくなる

良い包丁を使うことによって生まれる4つのメリットにより、うまくなる→楽しい→うまくなるの好循環のきっかけになるのです。

良い包丁を使わないと料理が下手になる?

少し極論のように聞こえますが、上達が制限されるというのは間違いではないかも知れません。

高級な包丁とそうでない包丁の最も大きな違いは、切れ味の持ちです。安い包丁は研ぎ上げた一番切れる状態がすぐに終わってしまいます。何度も研ぐのは手間がかかるので、どうしても切れ味が落ちた状態の包丁に慣れてしまいます

そうなると例えば同じ一皿を仕上げるにも、「もう少し切り身の角を強調し、美しく整えようか」というアイデア自体が浮かばず、「切って、並べる」になってしまいます。切れ味を活かした調理が身につかない大きなデメリットがまさにこれで、料理のポテンシャルにキャップをかけてしまうことになります。

まとめ

上記6つが、我々が良い包丁をおすすめする理由です。最初から良い包丁を使われる方は、6つ目の「良い包丁を使うことで上達を志す」という意気込みを感じますね。「形から入っているようで・・・」と気後れする方もいらっしゃると思いますが、形から入ることでしか得られない技術もあります。ぜひ良い包丁を手に入れること、考えてみてくださいね。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

田中諒

「切れ味で、つなぐ」堺一文字光秀三代目当主。 職人の技術と歴史、そして包丁にかける思いを皆様に届けて参ります。 辻調理師専門学校 非常勤講師 朝日新聞社 ツギノジダイ ライター

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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