砥石の手入れ

包丁をしっかりと研ぐには、砥石のお手入れも必要です。

面直しをして、日ごろから砥石ののメンテナンスを欠かさないようにしましょう。砥石の面直しについて、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。

砥石の手入れって必要なの?

包丁ほど神経質になる必要はないのですが、砥石もきちんとした手入れをする必要があります。

正しい手入れを知らないまま砥石を使っていきますと、砥石割れなどが起きますので砥石の寿命を縮めることにもなります。

砥石の割れには注意です。

砥石を使っていく上で一番気を付けないといけない事は砥石を割れないようにすることです。

いざ包丁を研ごうと砥石を出したときに、その砥石が真っ二つに割れていたり、表面にひびが入ったいたなど聞く事あります。

実は砥石はそれくらい、気温の変化や湿度の変化に弱い物なのです。

特に天然砥石は非常にデリケートなものですので、使い終わりはきちんと手入れして保管する必要があります。

  1. 使い終わりは水分をきちんと拭き取って乾かす。
    必ずではないですが、水分が残っている状態で保管するときに気温の変化でひび割れが起こる可能性があります。

  2. 直射日光の当たらない場所で保管する。
    砥石に直接日が当たる事が割れることが良くありますので、必ず室内で保管してください。

  3. 気温湿度が一定の場所で保管する。
    上に書いています通り砥石は気温や湿度の急激な変化には弱いです。

  4. 複数砥石を持っている場合は積み重ねて保管してない。
    砥石を積み重ねての保管は避けてください、重みで砥石が割れます。

水の浸けすぎに注意です。

包丁研ぎをする前に砥石は水に浸けるものとイメージしている方も多いと思います。


確かに一般的に普及している「ビトリファイド製法」の砥石は、製造時に1000度を超える高温で焼き入れ成形するため砥粒の結合が強く水による劣化はほとんどありません

そのため砥石内の気孔にしっかりを水をしみ込ませるために水に浸けておく必要があります。


ですが、砥石の製法によっては逆に水に浸けてはいけない砥石があります

その種類が「レジノイド製法」の砥石と「マグネシア製法」の砥石の二種類です。

このどちらも低温で焼き固めるか、乾燥だけで固めていますので、中に結合剤がしっかりと残っているため水に浸けてしまいますと砥粒の結合が弱くなってしまいます。

そのため水に長時間浸けてしまいますと、砥石自体が柔らかくなったり、割れてしまったりと劣化する恐れがあります。

もともとこの二種類の砥石は水に浸ける必要のない砥石ですので、水に浸けすぎないように注意してください。

砥石の種類の見極め方

「ビトリファイド製法」の砥石は水に浸けると泡がたくさん出てきます。逆に「レジノイド製法」と「マグネシア製法」の二種類は水に浸けても泡が出ません。

砥石の目詰まり

包丁を研いでいて砥石がツルツル滑ってなかなか研げない時がありませんか?

これは砥石表面の砥粒と砥粒の間に研ぎくずなどが詰まった状態になっています。

これを「砥石の目詰まり」と呼んでいます。


「マグネシア製法」の砥石が特に目詰まりが多くおきやすいのですが、この場合は砥石同士を擦り合わせることで再度研げる表面に戻せるようになります。

また目詰まりを直す専用のドレッシング砥石もあります。

砥石の面直し

砥石も研いでいきますと凹んでいきます。


ご存じの人も多いと思いますが、包丁を研いでいきますと刃だけではなく砥石も同じように削れて減っていきます

砥石を全面に使って研いでいけば均等に減っていくのですが、そんなわけにもいかず大体が砥石の真ん中がくぼんだようにへこみます

この状態で研いでいきますと、思うように研げないあまりか刃の型崩れの原因にもなりますので、砥石は常に平面に戻していかないといけません。

そのため砥石全面を削って面直しをすることが必要です。

なぜ面直しが必要なのか?

包丁を研ぐ上で最初に大事にしていただきたいのが、平面の砥石で研ぐことです。


なぜ平面の砥石で研がないといけないかといいますと、刃を研ぐ面(切り刃)は砥石と同じように平面に研がないといけないためです。

逆を言いますと、凹んだ(丸まった)表面で研ぐと刃も同じように丸まってしまうからです。


平面の砥石で研ぎをする必要があります。



包丁はハマグリ刃に研ぐのが理想ですが、これは研ぎに角度を調整して丸めますので同じ丸みでも意味が異なります。

また砥石がデコボコしている状態では、自分の当てたい箇所へ上手く刃を当てれず刃の型を崩してしまう事もあります。

特に和包丁の裏面は必ず平面を維持する必要がありますので、砥石も平面を維持しないといけません。


なにより凹んだ砥石で研ぐのは非常に研ぎにくいです

どれくらいのペースで面直しすればいいか

これも包丁を同じでどれくらいの頻度で包丁を研いでいるかで変わります。

ですが、こちらとしては出来る限りマメに面直ししてもらう事をお勧めします。

なぜかと言いますと、砥石が大きく凹んだ状態を直すのは包丁の型崩れを直すのと同じように非常に大変な作業になるからです。

それは砥石の寿命を短くもしてしまいますので、余裕があるのでしたら毎回研ぎ終わりに軽く砥石同士を擦り合わせるのでも大丈夫です。

私たちは研いでいる最中にでも気になる場合はその場で面直しをすることもあります。

面直しの方法

砥石の面直しをする方法はいろいろありますが、一つだけ守ってもらいたいことがあります。

それはそれは必ず平面になっている物で面直しをすることです。

凹んでいる砥石を平面に戻すのですから、それが平面でなくては全く意味がありません。

  1. 専用の面直し砥石を使用する
    面直し砥石は言わば砥石の砥石で、平面に直すためだけの砥石です。

  2. ダイヤモンド砥石を使用する。
    これは天然砥石や仕上げ砥石に使用する場合が多いです。
    ダイヤモンド砥石自体が完全な平面になっており尚且つ平面を常に維持出来ますので、より精度の高い平面に直すことが出来ます。

  3. コンクリートブロックで面直しする。
    わざわざ面直し砥石はもったいないという方の中では代用でコンクリートブロックに砥石をこすって面直ししている方もいてます。
    ただこの方法あくまでも間に合わせのですのでお勧めしません

おすすめの面直し砥石

面直しのやり方

面直しをする方法は特別なやり方があるわけではなく、お互いを擦り合わせるだけです。

ですが、均等の力で面直しをしていかないと水平に直らないあまりか面直し砥石自体が凹む場合もあります。

砥石表面に油性ペンで線を引く

砥石全体に油性ペンに斜めに線を引いていきます。
線を引く事で面直しした時に凹んでいる箇所が分かります。

砥石を真っすぐに前後に動かす

砥石の上を左手で押さえて、下を右手でしっかりと押さえます。
出来る限り両手の力を均等にして前後に砥石を真っすぐ動かします。

砥石の上下も持ち替える

均等にとはいっても人の手なのでどうしても均一には当たりません。
そのため砥石の上下を逆にして③と同じように前後に動かします。

砥石を斜めに動かす。

砥石を少し斜めにして四つ角が対角線になるように置きます。
同じように上の角を左手で、下の角を右手で押さえて真っすぐ前後に動かします。

砥石を逆の斜めで動かす。

先程とは逆に斜めにして同じように四つ角が対角線になるように持ち替えて前後に動かします。

砥石の表面の線を確認する。

最初にペンで引いた線が全面消えているか確認する。
もし消え残りがあるとまだ完全な平面になっていないので、最初から繰り返して直します。

面直し砥石自体も減りますので全面に均等に当てるようにしてください。

同じ面ばかりで面直ししますと、片減りしてしまいます。

上の面直し砥石は据え置き型の大きな物になります。

小型の面直し砥石やダイヤモンド砥石の場合は砥石を据え置いて、面直し砥石を持って同じ方法で面直しします。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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