ダイヤモンド砥石
最高の硬度を誇るダイヤモンド。砥石にダイヤモンドが使われているとなればよく研げそうと思いがちですが、意外なデメリットも?ダイヤモンド研石の種類や使い方を、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。
ダイヤモンド砥石とは
普段よく見かける砥石は「一般砥粒」と言う研磨剤を使用して作られていますが、ダイヤモンド砥石は「超砥粒」と言うダイヤモンド素材などを使用して作られています。
ご存じの通りダイヤモンドは地球上で最も硬さのある物質ですので、その素材を元に作られたダイヤモンド砥石は一般的な砥石と比べてはるかに硬い砥石になります。
元々は工業用の砥石として作らてきましたので、包丁用としては一般的ではなかったのですがその特徴から各砥石メーカーも様々な技術開発によって包丁用のダイヤモンド砥石が普及してきました。
ダイヤモンド砥石の特徴
砥石減りがない
砥石で研ぐ上で問題になるのが、研ぐたびに砥石がすり減っていくことです。
そして均等には減らないので、必ず真ん中が凹んだように減っていきます。
そのたびに砥石直しで平面に戻すようにしないといけません。
ですが、ダイヤモンド砥石は砥粒が硬く、なかなか擦り減らないので、砥石のような減りがほとんどなく常に平面精度を保ってくれます。
高い研磨力
使用されている素材がダイヤモンドの砥粒を使用しています。
ダイヤモンドは硬さがあることから、ひとつひとつの砥粒が硬く鋭くなっており、そして砥粒が表面に突き出しています。
そのため研削性がとても高く、良く研げるのもダイヤモンド砥石も特徴です。
ダイヤモンド砥石の種類
ダイヤモンド砥石はダイヤモンド砥粒を固めて作るのですが、その製法が二種類あり「電着」と「焼結」の二つに分類されます。
電着
電着とは土台となる金属の表面に、ダイヤモンドの砥粒をメッキ加工して付着させたものです。
この場合は土台からのダイヤモンド砥粒の突き出しが高く、研削性が高いので研磨力が良いのが特徴です。
また比較的容易に作ることが出来るので、価格も安く出来るのもメリットになります。
しかしメッキ加工でダイヤモンド砥粒を薄く付着させているだけですので、使用中に剥がれることが多く、また層が薄いため研いでメッキ層がなくなりやすいので、それほど寿命は長くないのでデメリットです。
メリット
- 番手以上に感じる高い研磨力
- 比較的安価で購入することが出来る
デメリット
- 研ぎ傷がとても深くなり、傷消しに手間がかかる
- メッキ層がとても薄いので、剝がれやすく層がなくなりやすいので寿命は短い
焼結
焼結はダイヤモンド砥粒と結合材を高温高圧で焼き固めて作ったものです。
焼結は層を厚く作ることが出来るので、電着とは異なり寿命が長く安定して使用することが出来ます。
番手も荒砥石から仕上げ砥石まで幅広く種類があるのが特徴で、研磨力は電着には若干劣りますが、その分研ぎ傷が浅くなり次の砥石の傷消しが楽になります。
平面保持力も高いので、仕上げ砥石でしたら和包丁の裏押しなどにも最適です。
反面電着と比べて製造コストが高いので価格も高価なものが多く、層の厚みも影響して少し砥石減りがあるのと、目詰まりがあるので面直しが必要になる事があります。
メリット
- 層が厚く、電着よりも寿命が長く安定して使用出来る。
- 荒砥石から仕上げ砥石まで幅広く番手があり、研ぎ傷も電着よりも浅くなる。
デメリット
- 製造コストが高いので、価格が高価になりやすい。
- 研磨力は電着より若干劣る上、砥石減りと目詰まりがある。
ダイヤモンド砥石に合った使い方
切り刃のベタ研ぎ
ダイヤモンド砥石に合った研ぎ方は平面に刃を研ぐ、いわゆるベタ研ぎです。
ダイヤモンド砥石の特徴は硬く常に平面であることと、高い研磨力です。
そして研ぐ刃もとても硬いのですが、これはお互い硬い物同士で研ぐことになります。
そのためダイヤモンド砥石で研ぐ場合は、お互いが点と点で研ぐので接地面はとても狭くなります。
これを研ぎ続けていきますと、点と点が広がっていき切り刃が平面のベタ研ぎとなります。
包丁はハマグリ刃にすることが理想ですが、ハマグリ刃に研ぎ続けていくと稀に刃が丸刃になって厚みが出るときがあります。
この時にダイヤモンド砥石で切り刃の厚みを整えることが出来ます。
また鉋やノミなどの大工道具は常にベタ研ぎの刃ですので、これらにもダイヤモンド砥石は向いています。
和包丁の裏押し
包丁には必ずベタ研ぎをしてもらう包丁があります。
それが和包丁の裏押しです。
裏押しをする時は必ず砥石を平面にしておく必要がありますが、平面維持力が高く、常に平面な状態のダイヤモンド砥石は裏押しには最適の砥石の一つだと思います。
砥石の面直し
意外かもしれませんがダイヤモンド砥石は面直しに最適なものです。
面直し用の砥石もありますが、これも面直しに使用すれば砥石と同じように減っていきます。
均等に減っていけばいいのですが、どうしても砥石と同じように片減りしてしまいます。
ですが、ダイヤモンド砥石はさんざん説明しています通り、常に平面な状態ですのでダイヤモンド砥石で面直しをすると砥石の平面の精度もとても高くなります。
著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)