砥石の素材

包丁の素材と同様に、砥石も素材や製法によって性能が異なります。

人造砥石と天然砥石の違いや材質の選び方などを、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。

人造砥石と天然砥石の違い

砥石はもともとは自然ん鉱山から採掘された砥石である天然砥石を主に使用されてきました。

しかし天然資源である天然砥石には採掘される量には限りがあり年々採掘量は減少してきており、その代わりに増加してきたのが工業用の砥粒で作られた人造砥石になります。

人造砥石自体は19世紀頃にアメリカで研磨材を成形されたのが始まりとされ、現在では刃物のみならずほとんどの研磨に人造砥石が使用されています。

砥石の性能を決める要素には荒さ(番手)、硬さ、サイズの三つがあり、人造砥石の製造では、砥石のサイズはもちろん、砥粒の種類、砥粒の大きさ、製造方法(結合度、組織、結合剤)を自由に変更することで、砥石の性能を調整が出来ます。

人造砥石がこれほど増加してきた理由には、工業用の特徴である規格がしっかりと決められた事で品質が安定するようになり、使い手の用途に応じて砥石を選べるようになったためです。

逆に天然砥石は個体によって一つ一つの品質にムラがあり、また流通量が年々減少しており希少価値の有るものになってしまい高価なものとなり一般的なものではなくなってきました。

しかし天然砥石は包丁をより美しく仕上げ、なにより繊細に仕上げられた刃先は切った断面も美しく見せることが出来ほどの切れ味が天然砥石の魅力となり、より研ぎを追及する愛好家の中で愛用され続けています。

人造砥石とは

人造砥石とは

人造砥石は砥粒(研磨材)を結合剤で焼き入れ成形した砥石で、一部を除いて包丁研ぎに使用している砥石のほとんどはこの人造砥石になります。

人造砥石の魅力は天然砥石とは逆に、安定した品質による使い勝手の良さと細かく分けれられた番手(粗さ)によってさまざまな研ぎに対応できるバリエーションの豊富さにあります。


人造砥石は基本的に三つの要素で構成されており、「砥粒(研磨材)」「結合材」「気孔」によって組み合わされています。

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砥粒(研磨材)

砥石の主原料となるもので、刃を研磨するのに必要な粒子でさまざまな種類がありそれによって硬度や粘りが変わります。

砥粒は大きく二つに分類され「一般砥粒」「超砥粒」に分けられます。

一般砥粒

普段目にしている砥石のほとんどがこの分類の砥粒を使用しており、価格も手ごろに作れるため良く普及している材料です。

主に「アルミナ質(A)」「炭化けい素質 (C)」を中心に様々な種類があり、それらの粒子が角ばっていたり、丸まっていたりと、硬さが異なったりすることによって砥石の性質が変わってきます。

超砥粒

ダイヤモンドやCBN(ホウ素)などを原料として作られる砥粒で、非常に硬度が高く耐摩耗性に優れている反面価格が高くなります。

元々は超鋼、セラミック、ダイヤモンドなどの高硬度の素材を研削するための物でしたが、現在では包丁用としても製造されることが多くなってきました。

結合材

結合剤は砥粒同士を結合保持するための役割があります。

簡単に言いますと主原料である砥粒をくっつけるボンドになります。

結合剤は砥粒を結合するだけの物と思われていますが砥粒と同じくさまざまな種類がある上に、砥石の性質を大きく左右するのはこの結合材によるものです。

そのため各砥石メーカーも砥石を製造する上で結合材による製法が最も重要視されています。

代表的なものが「ビドリファイド」「レジノイド」「マグネシア」の三種類になります。

製法特徴用途種類
ビトリファイド可溶性粘土や長石などのセラミック質、ガラス質を1000度を超える高温で焼き固めたもの・砥石の中で最も研削性があり、高い研磨力が最大の特徴。

・気孔が多くあり、表面の目詰まりが少ない。
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レジノイド


フェノールやエポキシなどの合成樹脂を200度前後の比較的低温で焼き固めたもの・吸水性が低く、水を吸わないので研ぐ前に水に浸ける必要がない。

・砥石の弾力が有り、研いだ時の刃当たりが良くきめ細やかな仕上がりになります。
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マグネシアマグネシアセメントの結合材を焼き固めるのではなく、常温乾燥で練り固めたもの・研削性が高いうえ、天然砥石のようなきめ細やかな仕上がりに研ぎ上げられることが出来る。

・レジノイドと同じく吸水性が低いので、研ぐ前に水に浸ける必要がない。
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気孔

砥石は砥粒と結合材を結合させて作りますが、内部に隙間がありそれを気孔と呼びます。

この隙間がポケットの役割を果たしており、刃を研磨した際の研ぎくずを一時的に溜めてそして排出してくれる重要な役割があります。

つまりはこの気孔が有ることによって表面の目詰まりが起こりにくく、安定して研いでいけるようになっています。

砥石を製造するときの製法によって気孔がある有気孔と気孔がない無気孔の二種類があります。

一般的にはビトリファイドの砥石は有気孔が多く、レジノイド、マグネシアの砥石には無気孔の物が多いです。

天然砥石とは

天然砥石とは


地球の悠久のときが生み出した大自然の宝物

天然砥石は何億年も昔から現代にかけて気の遠くなる時間をかけて堆積岩や凝灰岩などが積み重なって出来た地層を採掘した天然石です。

採掘される地域によって砥石の特色も変わっており、それによって研ぎの仕上がりが変わってきます。

天然砥石は包丁をより美しく仕上げ、そして繊細に仕上げられた刃先は切った断面も美しく見せることが出来ることから研ぎを極めたい愛好家の間から愛用されています。

天然砥石の産地

天然砥石の産地について

天然砥石は自然から採掘されるものですから、全国各地から産出されてきました。

荒砥石の和歌山県の「大村砥石」長崎県の「平島砥石」

中砥石の京都府の「青砥」熊本県の「天草砥石」

そして仕上げ砥石の京都府の「合砥」

などさまざまな地域から採掘されており、その採掘地域によって砥石の特徴が異なってきます。

中でも京都で採掘される合砥は質では群を抜いており、そのきめ細やかな仕上がりは愛好家の中でも評判が高い砥石です。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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