人造砥石

安定して求める性能の砥石が手に入る人造砥石。

当然素材や製法によって人造砥石も性能が番います。

人造砥石の製造工程やおすすめの選び方について、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。

人造砥石とは

人造砥石は砥粒(研磨材)を結合剤で焼き入れ成形した砥石で、一部を除いて包丁研ぎに使用している砥石のほとんどはこの人造砥石になります。

人造砥石の魅力は天然砥石とは逆に、安定した品質による使い勝手の良さと細かく分けれられた番手(粗さ)によってさまざまな研ぎに対応できるバリエーションの豊富さにあります。

人造砥石のメリット

安定した品質

人造砥石の一番のメリットと言えば、常に安定した品質の高さになります。

天然砥石ならばこのように行きません、もともとの個体差が激しい上、研ぎ続けるたびに粒子の細かさが変わってきますし、なにより石英の塊で「地を引く(刃に傷が入る)」という事もあります。

細かく分けられた番手

天然砥石も荒さは色々ありますが、人造砥石はさらに細かく分類されており、それが番手という数字で分けられています。

そしてその番手によって「荒砥石」、「中砥石」、「仕上げ砥石」にきちんと分類されているので、自分の目的に合った研ぎ方が出来ます。

価格が安価で購入できる。

工業製品のメリットである大量生産が出来るため、価格が安価で購入しやすい。

人造砥石の要素とは

人造砥石は基本的に三つの要素で構成されており、「砥粒(研磨材)」「結合材」「気孔」によって組み合わされています。

砥粒(研磨材)

砥石の主原料となるもので、刃を研磨するのに必要な粒子でさまざまな種類がありそれによって硬度や粘りが変わります。

結合材

砥粒同士を結合保持する役割があり、ボンドとも言われることがあります。

気孔

砥石の中にある砥粒と結合剤の間の隙間で、研いだ時にでる切りくずを一時的に溜めて排出してくれる役割があります。

砥粒(研磨材)とは

砥石の主原料となるもので、刃を研磨するのに必要な粒子でさまざまな種類がありそれによって硬度や粘りが変わります。

砥粒は大きく二つに分類され「一般砥粒」「超砥粒」に分けられます。

一般砥粒

普段目にしている砥石のほとんどがこの分類の砥粒を使用しており、価格も手ごろに作れるため良く普及している材料です。

主に「アルミナ質(A)」「炭化けい素質 (C)」を中心に様々な種類があり、それらの粒子が角ばっていたり、丸まっていたりと、硬さが異なったりすることによって砥石の性質が変わってきます。

アルミナ質(アランダム)

A 褐色アルミナ質

最も普及している砥粒で靭性が最も高く、荒砥石から仕上げ砥石まで幅広く使用されている材料であります。

硬度と靭性のバランスが良くオールラウンドに使用できます。

WA 白色アルミナ質 

Aアルミナ質と比べ靭性は劣るが硬度は高く仕上げ砥石に使用されることが多い。

PA 淡紅色アルミナ質

アルミナ質の中では靭性が高く、形状保持力に優れているのが特徴

炭化けい素質

C 黒色炭化けい素質

アルミナ質より靭性は劣るが、硬度が高いため研磨性が高いのが特徴

GC 緑色炭化ケイ素

砥粒の中では最も硬度が高いので非常に研磨性に優れているため荒砥石に使用されることが多い。

反面靭性に欠けるため砥石減りが早く消耗する

超砥粒

ダイヤモンドやCBN(ホウ素)などを原料として作られる砥粒で、非常に硬度が高く耐摩耗性に優れている反面価格が高くなります。

元々は超鋼、セラミック、ダイヤモンドなどの高硬度の素材を研削するための物でしたが、現在では包丁用としても製造されることが多くなってきました。

ダイヤモンドホイール

世界でもっとも硬い物質であるダイヤモンドは、セラミックス、超硬合金、フェライトの研削、砥ぎ、成形に優れた唯一の砥粒です。

CBN(ホウ素)

ホウ素と窒素で構成されるもので、ダイヤモンドの次に硬度があります。
ダイヤモンドホイールと比べて研削の際に熱が出にくい特徴があります。

結合材とは

結合剤は砥粒同士を結合保持するための役割があります。

簡単に言いますと主原料である砥粒をくっつけるボンドになります。

結合剤は砥粒を結合するだけの物と思われていますが砥粒と同じくさまざまな種類がある上に、砥石の性質を大きく左右するのはこの結合材によるものです。

そのため各砥石メーカーも砥石を製造する上で結合材による製法が最も重要視されています。

代表的なものが「ビドリファイド」「レジノイド」「マグネシア」の三種類になります。

製法特徴用途種類
ビトリファイド可溶性粘土や長石などのセラミック質、ガラス質を1000度を超える高温で焼き固めたもの・砥石の中で最も研削性があり、高い研磨力が最大の特徴。

・気孔が多くあり、表面の目詰まりが少ない。
荒砥石に最適堺一文字光秀 特選 ツバ印シリーズ
レジノイド


フェノールやエポキシなどの合成樹脂を200度前後の比較的低温で焼き固めたもの・吸水性が低く、水を吸わないので研ぐ前に水に浸ける必要がない。

・砥石の弾力が有り、研いだ時の刃当たりが良くきめ細やかな仕上がりになります。
中砥石から仕上げ砥石に最適堺一文字光秀 特選 煌シリーズ
マグネシアマグネシアセメントの結合材を焼き固めるのではなく、常温乾燥で練り固めたもの・研削性が高いうえ、天然砥石のようなきめ細やかな仕上がりに研ぎ上げられることが出来る。

・レジノイドと同じく吸水性が低いので、研ぐ前に水に浸ける必要がない。
荒砥石から仕上げ砥石まで全般の番手に最適シャプトン製 セラミック砥石

ビトリファイド

可溶性粘土や長石などのセラミック質、ガラス質の結合材であり、砥粒の保持力がとても強く、経年劣化が少なく品質が安定している。

砥粒と混合し高圧で成型した後に、1000℃を超える非常に高温で焼き固める製法で荒砥石から中砥石用で作られることが多いです。

砥石の中ではビトリファイドで製造された砥石が最も研削性があり、高い研磨力が最大の特徴になります。

砥石内の気孔が多くあり、研いだ切りくずを排出しやすいので表面の目詰まりが少なくなるのがメリットの一つでもあります。

その反面吸水性がとても高く水をよく吸うため、しっかりと時間をかけて水に浸けてから使用する必要があります。

一般的にはビトリファイド製法の砥石が「セラミック砥石」に分類されますが、メーカーによっては他の結合材でもセラミックと名称されていることがありますので要注意です。

ビトリファイドの代表的な砥石

堺一文字光秀 特選 ツバ印シリーズ

レジノイド

フェノールやエポキシなどの合成樹脂を使用した結合材で、ベークライト法とも言われることがあります。

ビトリファイドとは異なり、200℃前後の低温で焼き固めるため比較的製造が簡単で荒砥石から仕上げ砥石まで幅広く作られており、特に仕上げ砥石ではレジノイドで作られることが多いです。

特徴としまして非常に弾力性が高く、研いだ時の刃当たりが滑らかな感触でビトリファイドと比べ研磨力は劣りますが、とてもきめ細やかな仕上がりに研ぐことが出来ます。

レジノイドの代表的な砥石

堺一文字光秀 特選 煌シリーズ

マグネシア

マグネシアセメントの結合材で混合されており、常温乾燥で練り固めることが出来るため焼き固める必要がありません。

特徴としましてとても研削性が高いうえ、天然砥石のようなきめ細やかな仕上がりに研ぎ上げられることが出来る非常に高品質の砥石が多いです。

そのためか高価格帯の砥石が多いです。

レジノイドと同じく吸水性が低いため使用前に水に浸ける必要がないのですが、逆に長時間水に浸けると砥石が軟化して品質低下する場合があります。

また経年劣化が激しく、常温保管していてもひび割れなどが起きる恐れがあり非常に扱いが難しいデメリットがあります。

マグネシアの代表的な砥石

シャプトン製 セラミック砥石

気孔とは

砥石は砥粒と結合材を結合させて作りますが、内部に隙間がありそれを気孔と呼びます。

この隙間がポケットの役割を果たしており、刃を研磨した際の研ぎくずを一時的に溜めてそして排出してくれる重要な役割があります。

つまりはこの気孔が有ることによって表面の目詰まりが起こりにくく、安定して研いでいけるようになっています。

砥石を製造するときの製法によって気孔がある有気孔と気孔がない無気孔の二種類があります。

一般的にはビトリファイドの砥石は有気孔が多く、レジノイド、マグネシアの砥石には無気孔の物が多いです。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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