仕上げ砥石
包丁を研ぐ際に最後に使用される仕上げ砥石。仕上げ砥石の使い方やおすすめの選び方を、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。
仕上げ砥石とは
よく初心者の方から最初に持つ砥石の選び方を聞かれますが、まず砥石を選ぶ中で一番重要なポイントが砥石の番手(荒さ)です。
番手とは、砥石の粒度の粒子の大きさのことで、「#」の後に数字を入れることから包丁の世界では番手と呼んでいます。
この番手の数字が小さいほど粒度が荒くなり、逆に大きくなるほど粒度も細かくなります。
仕上げ砥石はその名の通り最後の仕上げに研ぐ時に使用する砥石です。
番手は#2000から上の物が全て仕上げ砥石になり、#10000を超える番手まである幅広い種類があります。
仕上げ砥石の役割
刃先に残ったザラつきを取る
基本的には中砥石で研げば切れる刃は付きます。
ですが、中砥石で研いだ後の傷はまだ多少荒くが残っており、刃先にもザラつきもあるので切れ口が若干荒くなります。
そこで中砥石よりも細かい仕上げ砥石で、中砥石の傷を取れば刃先に残っているザラつきも小さくなりより切れ味が良くなります。
特に切った切れ口の綺麗さが重要な柳刃包丁などには仕上げ研ぎをしたほうが良いかと思います。
研ぎ上がりをピカピカの鏡面に出来る
砥石は荒砥石から中砥石、さらに仕上げ砥石へと番手を上げて研いでいくことで研ぎ傷がどんどん浅くなっていきます。
そして#6000を超える超仕上げ砥石などまで研ぎ進めて行きますが、研いだ後がピカピカの鏡面仕上げになります。
この状態ですと、刃先のザラつきも少なく切れ味も良くなるのですが、なにより見た目が綺麗になります。
そしてもう一つメリットがあり、鏡面にすると錆びが出にくくなります。
お風呂場の鏡をイメージしてもらいますと分かりやすいですが、水滴が下へ垂れ流れていき水気が残りにくいです。
それと同じで鏡面の箇所は傷が浅く、水気が刃に残りにくいので錆びが出にくくなります。
和包丁の裏押しに必要
和包丁の裏は裏スキと言う平面ではなく凹んだ状態になっております。
そして最後に裏を研ぐ裏押しという作業があります。
その裏押しを荒砥石、中砥石などの荒い砥石でしますと、研ぎすぎて裏スキがどんどんとなくなっていく可能性があります。
なにより和包丁の裏は鋼がむき出しになっていますので、研ぎすぎてしまいますと大事な鋼がなくなっていきますので包丁の寿命が短くなりますので、裏押しは仕上げ砥石でしていただく事をおすすめします。
仕上げ研ぎはごまかしがききません。
当社で包丁研ぎをする時は、荒砥石から中砥石へ、そして最後に仕上げ砥石まで研いでいきます。
けれど荒砥石、中砥石で研いでいる時には気にならなかった研ぎの粗が仕上げ砥石で研ぐことによって見えてくることがあります。
刃先の研ぎ傷が荒く残っていて仕上げ砥石ではバリが取れなかったり、刃先の厚みが均一に研げていなかったため研ぎムラがあったりなど仕上げ砥石で研いだ時に気づく事がたくさんあります。
これらは荒砥石、中砥石での研ぎが甘かったためです。
仕上げ砥石はそれまでの研ぎが上手くできるいるか明確に見えてきますので、荒砥石、中砥石での研ぎがきちんとしていない限り仕上げ砥石の本来の良さを生かすことが出来ません。
逆と言いますと、仕上げ研ぎまでの工程が完璧ですと包丁は見た目も綺麗になり、なにより刃の鋭さを最大限に発揮できるようになります。
研ぎ職人のおすすめする仕上げ砥石
堺一文字光秀 特撰砥石 煌シリーズ 仕上げ砥石 #4000
メリット
- 番手以上に細かさ感じる滑らかな研ぎ味
#4000は仕上げ砥石の中ではそれほど細かくはないですが、研ぎ味が非常に滑らかなので番手以上にきめ細やかな仕上がりに研ぎ上げることが出来ます。 - 包丁の種類を選ばない万能性の高さ
若干弾力があるものの、柔らかめの仕上げ砥石でオールラウンドに使用できる万能性があります。
デメリット
- 砥石減りが少し早い
若干柔らかい砥石なので、仕上げ砥石の中では砥石減りが早めです。
研ぎ職人からの一言
仕上げ砥石の中では完成度がピカイチの砥石です。私自身が研ぐ時も和包丁、洋包丁問わず必ず仕上げ研ぎには使用するほどオールラウンドに使うことが出来る万能性があります。あえて難点があるとすれば少し砥石減りが早いことくらいです。もし最初に仕上げ砥石を買われるのに迷われたらこちらをおすすめします。
堺一文字光秀 特撰砥石 煌シリーズ 仕上げ砥石 #8000
メリット
- 鋭い刃付けをすることが出来ます。
この番手の砥石まで当てますと、刃先のザラつきを感じること少なくシャープな刃付けが出来ます。 - 和包丁との相性が特に良いです。
研ぎ汁(砥粒)によりものだと思いますが、和包丁を研ぐと鋼が綺麗に光るのに、軟鉄がとても良く霞んで刃境がはっきりとでて綺麗な霞仕上げに出来ます。
デメリット
- 価格が高くなる
このレベルの番手ですので仕方ないのですが、やはり仕上げ砥石の中では高価なものとなります。
研ぎ職人からの一言
こちらも仕上げ砥石としてはとても完成度が高いです。基本的には包丁の種類は選びませんが、特に和包丁には相性が良いです。鋼を磨いて光らせていくと同時に軟鉄がはっきりと霞んでくれるので、いい感じの霞研ぎが出来ます。
著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)