砥石の番手

砥石は粒の荒さによって、荒砥石、中砥石、仕上砥石に分けられます。それぞれの番手の選び方や使用用途について、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。

砥石の番手とは

よく初心者の方から最初に持つ砥石の選び方を聞かれますが、まず砥石を選ぶ中で一番重要なポイントが砥石の荒さ(番手)です。

番手とは、砥石の粒度の粒子の大きさのことで、「#」の後に数字を入れることから包丁の世界では番手と呼んでいます。

この番手の数字が小さいほど粒度が荒くなり、逆に大きくなるほど粒度も細かくなります。

砥石の荒さの違いが研削性の差つまりはどれだけ良く研げるかが変わってきます。

そしてその番手の違いによって「荒砥石」「中砥石」「仕上げ砥石」の三種類に分類されます。

その三種類の砥石にはそれぞれ研ぎの役割があります。



例えば番手の数字が小さい荒砥石は表面がとてもザラザラしていて研磨力が高い砥石で、刃を研ぐととても良く研げます、その反面研いだ刃の表面はとても荒く傷だらけの状態になります。

逆に番手が大きい仕上げ砥石は表面はツルツルしていて研削性は弱いですが、研いだ刃の表面の傷が細かくなり、このまま仕上げ砥石は研ぎ進めて行くと刃がピカピカに光ります。

この三種類の砥石を使い分けて包丁は研いで行くわけです。

砥石の番手の違いと役割について

荒砥石  中砥石  仕上げ砥石
#80~#400#1000前後#2000以上
刃こぼれ・型直しの時に使用する刃を付けるときに使用する小刃引きや裏押しに使用する

荒砥石とは

三種類の砥石の中で一番荒いのがこの荒砥石になります。

番手では#80~#400前後になり、基本的には#200が標準の番手になります。

荒砥石の役割

荒砥石は研削性が高く、基本的には刃こぼれを直したり、刃の形状を直したりするときに使用する砥石です。

ですが、研ぎをされる方の中には刃を減らし過ぎてしまうので、荒砥石は必要ないと言われる方が稀にいます。

しかし私たちは荒砥石は包丁研ぎにおいて中砥石と同じく重要な砥石だと考えています。

包丁は焼き入れをしており、非常に硬い金属ですので中砥石や仕上げ砥石だけで刃を研いでいくには研磨力が足りません

特に長くご利用になられた包丁は刃先が丸まっており、荒砥石で刃全体を肉抜きしないと刃先がどんどん厚くなっていき切れ味が悪くなります。

包丁を研ぎ続けていく上で、この厚みの調整をする時が必ず来ますのでその時のために荒砥石と言うのは必要な砥石になります。

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中砥石とは

研ぎの標準となる砥石でまず最初に揃えるならこの中砥石になります。

番手は#1000前後になります。

荒砥石で研いだ研ぎ傷を取り除き、刃先を細かく滑らかに整えます。

中砥石の役割

この三種類の中で一番最初に必要な砥石がこの「中砥石」になります。

中砥石は全ての研ぎの基準となる砥石で、この砥石で包丁を切れる状態に戻します。

中には中砥石で一つで十分だと言う人もいます。

なのでまず砥石の番手選びに悩みましたら最初は「中砥石」を選んでください。

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仕上げ砥石とは

その名の通り最後の仕上げに研ぐ時に使用する砥石です。

番手は#2000から上の物が全て仕上げ砥石になり、#10000を超える番手まである幅広い種類があります。

仕上げ砥石の役割

仕上げ砥石は三種類の中で一番細かく、研磨力が弱い砥石になり、刃を研ぐと言うより磨くと言ったほうが良いかもしれません。

しかし包丁研ぎの中で大きく研ぐという工程が必要ない研ぎがあります。

それが「小刃引き」と和包丁の「裏押し」になります。

このどちらも逆に研ぎすぎてしまいますと切れ味を悪くしてしまったり、刃の寿命を縮めてしまう恐れがありますので、仕上げ砥石で研いでもらう必要があります。

他にも中砥石で研いだザラつきを細かく仕上げることが出来ますので、切れ味が重視される和包丁(柳刃などは特に)にはあったほうが良いです。

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最初はどの番手の砥石を選べばいいの?


砥石の番手の選ぶ順番

「中砥石」→「荒砥石」→「仕上げ砥石」の順番で揃えることをお勧めします。

まずは中砥石を選んでください。


この三種類の中で一番最初に選んでいただく砥石は「中砥石」になります。

中砥石は全ての研ぎの基準となる砥石で、この砥石があれば包丁を切れるように戻すことが出来ます。

まだ研ぎ慣れていない方や、初めて砥石を買われるのでしたら最初は中砥石を購入してください。

普段の研ぎでしたら中砥石だけでも問題はありませんので、必要に応じて他の番手の砥石を順番に揃えていけばよろしいかと思います。

中砥石の選び方

砥石の番手が決まったら、実際に砥石を選ぶことになります。
砥石の性能を決める要素は、番手(砥粒の大きさ)の他に砥粒の素材と製法があります。

同じ番手の砥石でも、砥粒の素材や製法が異なれば、硬さや研ぎ汁の出やすさなどが変わるので、使い勝手も変わるのです。

例えば、ステンレスの包丁は硬いので、研ぐには研磨力の高さや、研ぎ汁の出やすさが必要になります。

逆に、鋼の包丁は柔らかいので、砥石は研磨力が少し低いものでも問題ありません。

かわりに研ぎ味の滑らかなものを選ぶことで、中砥石だけで仕上げ砥石に近い研ぎが行うこともできます。

砥粒の素材や製法について詳しく知りたい方は、下記のページで解説していますので、ここでは、おすすめの中砥石の紹介だけにとどめます。

こちらの砥石は、柔らかく、研ぎ汁が出やすいので研磨力が高いのが特徴です。
柔らかい砥石は研ぎやすいので、ステンレスの包丁をお持ちの方の他、研ぎに慣れていない初心者の方にもおススメです。

こちらの砥石は、少し硬めで癖が強いので研ぐ人を選びますが、鋼の包丁を研ぐのに十分な研磨力がありますし、非常に滑らかで綺麗な仕上がりになるのが特徴です。
ステンレス鋼とはあまり相性がよくありませんが、鋼の包丁をお持ちの方にはおすすめの砥石です。

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中砥石の次の砥石の選び方

次にどの砥石を買えばいいのかですが、この先はどのように包丁を研ぎたいかで砥石選びが変わります。

ですが、当社では中砥石の次に選んでいただきたいのは「荒砥石」になります。



包丁を研ぐと言うのは、刃を削る事ですので研げば研ぐほど刃は減っていきます。

そしてどんなに研ぐが上手い人間でも中砥石だけで研いで行っても、必ず研ぎにムラが出て刃の形が崩れてきます

また包丁の構造上研ぎ減らしていくにつれて刃先は厚みが出てきます

その段階では中砥石では修正不可能ですので、その時のために荒砥石を持たれることをお勧めします。



次に仕上げ砥石を揃えられたらよろしいかと思います。

ただ和包丁を研がれるのでしたら、仕上げ砥石は重要な砥石になりますので荒砥石と同時に購入されるのもいいです。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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