中砥石
日々の包丁のメンテナンスに使われる中砥石。中砥石の使い方やおすすめの選び方を、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。
中砥石とは
よく初心者の方から最初に持つ砥石の選び方を聞かれますが、まず砥石を選ぶ中で一番重要なポイントが砥石の番手(粗さ)です。
番手とは、砥石の粒度の粒子の大きさのことで、「#」の後に数字を入れることから包丁の世界では番手と呼んでいます。
この番手の数字が小さいほど粒度が荒くなり、逆に大きくなるほど粒度も細かくなります。
その中で一番最初に必要な砥石がこの「中砥石」になります。
中砥石の基本的な番手は#1000になります。
中砥石は全ての研ぎの基準となる砥石で、この砥石で包丁を切れる状態に戻します。
中砥石の役割とは
切れる刃を付ける
中砥石の唯一の役割かつ、研ぎで最も重要な刃を付ける工程に必要な砥石が中砥石になります。
包丁研ぎで刃を付けるという表現を使いますが、これは切れると言う意味とは全く異なるものだと思っています。
極端に言ってしまえば、荒砥石だけで研いでも切れますし、もっと言いますと茶碗の裏面で刃をこするだけでも食材が切れると思っている人もいます。
これはただ食材が切れているだけで、簡単に綺麗に切れているわけでも、切れ味が長持ちしているわけではありません。
もしそれでいいのでしたら包丁が存在する意味がなくなります。
刃を付けると言うのは、包丁が持つ本来の性能を引き出して、どんな人でもストレスなく使用していけると言う意味だと思います。
そして中砥石はその刃を付けるときに必要になる、最も重要な砥石になります。
研ぎの基本は中砥石です。
上にも書いています通り、包丁を切れるように刃を付けるには中砥石が欠かせません。
さらに切れ味を良くしていくには、荒砥石、仕上げ砥石が必要になりますが、その前に中砥石を使いこなして刃を付けるようにならなければ意味がありません。
砥石選びに悩まれましたら、まず最初に中砥石を用意していただきまして、研ぎを始めてください。
研ぎ職人のおすすめの中砥石
堺一文字光秀 特撰砥石 煌シリーズ 中砥石 #1000 軟口
アルミナ系の研磨剤とレジノイド樹脂の結合剤を混ぜ成型し、低温(200℃程度)で固めて作られます。
柔らかいソフトな砥石で、研ぎ汁が良く出ますので煌シリーズ♯1000より研磨力が高く良く研げるので、初心者の方にも扱いやすい砥石です。
メリット
- 砥石のかかりが良く、研磨力が高い。
柔らかいので研ぎ汁が良く出ることも相まって、研いだ時のかかりが良く研磨力が高いです。 - 初心者にも研ぎ易い柔らかさ
砥石が柔らかいと言うのは研いだ時の反発が少ないので、研ぎ慣れていない初心者の方にも研ぎ易くなっています。
デメリット
- 砥石の減りが早い
柔らかい砥石の宿命ですが、砥石の減るスピードが早く面直しの回数が多くなります。 - 研ぎ傷が少し残りやすい
良く研げる反面、荒砥石で研いだ研ぎ傷を完全には取り切れない。
研ぎ職人からの一言
基本的に包丁の種類、鋼材問わずオールラウンドに使用できる万能の砥石です。柔らかい砥石は研ぎ易いので初心者の方には向いています。特にステンレス鋼の包丁全般を研がれるのでしたらこの砥石をお勧めします。
堺一文字光秀 特撰砥石 煌シリーズ 中砥石 #1000
アルミナ系の研磨剤とレジノイド樹脂の結合剤を混ぜ成型し、低温(200℃程度)で固めて作られます。
砥石としては標準からやや硬めの砥石で、レジノイド系特有の弾力のある砥石で研磨力は他の中砥石と比べると劣りますが、非常に滑らかな感触で研いだ仕上がりが綺麗に仕上がる砥石です。
メリット
- 研ぎ上がりが綺麗な仕上がりになります。
中砥石の中では滑らかな研ぎ味で、仕上げに近い綺麗な仕上がりになります。
特に鋼の和包丁を研ぐ時には相性が良いです。 - 砥石減りは少ないです。
物凄く硬質な硬さではありませんが、弾力があり砥石減りは少ないほうです。
デメリット
- 研磨力が弱めです。
研ぎ汁はそこそこ出るのですが、それほど研磨力は高く感じません。
研ぎ職人からの一言
砥石としては少し硬めで弾力があり癖が強いので、研ぐ人を選びます。鋼の和包丁にはとても相性がいいと思います。この砥石で仕上げ砥石に近い仕上がりになり刃金部分(鋼)が良く光りますので刃境はしっかり出ます。逆にステンレス鋼とは相性が悪いように感じます。
著者紹介About the author
堺一文字光秀
渡辺 潤
自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)