荒砥石

包丁を欠けた場合に使われる荒砥石。荒砥石の使い方やおすすめの選び方を、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。

荒砥石とは

よく初心者の方から最初に持つ砥石の選び方を聞かれますが、まず砥石を選ぶ中で一番重要なポイントが砥石の番手(粗さ)です。

番手とは、砥石の粒度の粒子の大きさのことで、「#」の後に数字を入れることから包丁の世界では番手と呼んでいます。

この番手の数字が小さいほど粒度が荒くなり、逆に大きくなるほど粒度も細かくなります。



その中で一番番手の数字が小さいのが「荒砥石」です。

番手では#80~#400前後になり、基本的には#200が標準の番手になります。

荒砥石の役割とは

刃こぼれや型崩れを直す

これが荒砥石の使用する一番の目的になります。

包丁を使用する上で刃こぼれすることは避けられません、そして包丁を研いでいく中で上手く研げない時もあります。

そうして起きた刃こぼれや型崩れなどは通常の研ぎでは修正することが出来ませんので、荒砥石で大きく削りだして刃の形を修正してから再度研ぎ直しをする必要があります。

刃厚の調整する

切れる包丁の一つの要素としてどれだけ刃が薄く研げているかが大事なポイントになります。

そのため刃の厚みを薄くするいわゆる「肉抜き」と言う作業が必要になります。

刃を研ぎ減らして厚くなった包丁はもちろんのこと、新品の包丁も実は若干厚みを残しているので切れ味を重視しているの人はこの作業をしないといけません。

中砥石、仕上げ砥石は基本的には刃先を研ぐ砥石になりますので、この肉抜き作業には向いていません。

荒砥石を使用して刃の厚みを薄くしないといけません。

研ぎムラを修正する

包丁研ぎは手作業ですので、どんなに研ぎが上手い人でも研ぎ進めて行きますと研ぎムラが出てきます。

研ぎムラと言うのは刃先の厚みが均一になっていない事です。

特に中砥石、仕上げ砥石を中心に研ぎをしている包丁はより研ぎムラが多くなります。

この状態で研ぎ続けていくと型崩れになる可能性がありますので、荒砥石で研ぎムラをなくして研ぎ面を整える必要があります。

荒砥石を使いこなすことが上達のカギです

包丁を研ぐ上で感じているので、荒砥石でどれだけ上手く使いこなすかが綺麗に研げるかのカギだと思っています。

上の書いています通り荒砥石の用途はたくさんあり、それくらい荒砥石の出番は多いです。

そしてその用途を要約すると「荒砥石で研ぎの土台を作る」です。

刃先を研げば包丁は切れるようにはなるのですが、切れるように研ぐのと綺麗に研ぐのとは全くの別物です。

荒砥石で土台を丁寧に作れた包丁ほど次の中砥石へのつなぎが楽になり、研ぎあがった包丁は綺麗に仕上がります。

研ぎを上達させたいのでしたら、ぜひ荒砥石を上手く使いこなせるようになってみてくいださい。

研ぎ職人のおすすめの荒砥石

堺一文字光秀 特撰砥石 ツバ印 GC 荒砥

堺一文字光秀特選砥石ツバ印GC荒砥石

GCとはグリーンカーボランダムの略で、緑色炭化ケイ素の砥粒で非常に角が立った研磨剤で昔から荒砥石の代表的な砥石として作られてきました。

メリット

  1. 研磨力が高く良く研げる
    荒砥石の中でも高い研磨力があり、良く研げます。

  2. 包丁の種類、鋼材を選ばない万能性
    砥石としてはそれほど硬くなく、刃がしっかりとかかってくれますので包丁の種類や鋼材を選ばないので初心者の方にも安心してご使用できます。

デメリット

  1. 砥石減りがとても早い
    研ぎ汁がたくさん出るので、その分砥石の減るスピードが早く面直しの回数が多くなります。

  2. 研ぎ傷が深くなる
    砥粒が非常に角が立った研磨剤なので研いだ時の傷が深く残ります。

研ぎ職人からの一言

基本的にはこの砥石は包丁の種類、鋼材問わずオールラウンドに使用できる万能の砥石です。非常に研磨力が高いので良く研げますので、特にステンレス鋼など砥石のかかりが悪い包丁にはこちらの砥石は最適です。反面砥石は減りやすいのでマメに面直ししてください。

堺一文字光秀 特撰砥石 ツバ印 PA 荒砥 #220

堺一文字光秀特選砥石ツバ印PA荒砥石

PAとはピンクアランダムの略で、アルミナ系の砥粒で硬度と靭性が高いので砥石減りが少ないのが特徴です。

メリット

  1. 砥石減りが少ない
    こちらの砥石はGC荒砥石と比べて硬質の砥石ですので、研いでいても砥石減りが少ないです。

  2. 研ぎ傷はそれほど深くならない
    研いだ時に出る傷は深くないので、その後の中砥石の研ぎが楽になる。

デメリット

  1. 研いだ時の滑る感触がある
    硬い砥石の特徴ですが、砥石のかかりが悪く表面で滑る感触が強いです。
  2. 目詰まりがしやすい
    これも硬い砥石の特徴ですが、砥石がなかなか削れないので表面が目詰まりが起きやすいです。

研ぎ職人からの一言

硬い砥石はどうしても研ぐ人を選ぶので、研ぎ慣れた方が硬いほうが好みなのでしたらこちらが良いです。ただ滑る感触が強いので、ステンレス鋼とは相性が悪く感じます。ただ砥石減りが少ないので面直しが面倒な方でしたらこちらをおすすめします。

著者紹介About the author

堺一文字光秀

渡辺 潤

自社ブランド「堺一文字光秀」の販売、包丁研ぎ、銘切りをしており、その視点から感じたことや疑問を皆様にお伝えさせていただきます。

監修
一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)
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