包丁の種類
出刃や三徳、柳刃に薄刃など、代表的な和包丁に加え洋包丁や中華包丁など、包丁の種類は多岐にわたります。包丁ごとの特徴や使用目的、選び方まで、伝統の包丁ブランド、堺一文字光秀が語ります。
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包丁の種類は無限にある
包丁の種類は、使い手のニーズに鍛冶屋が応えるという形で増えていきました。
「○○を切るのに、こんな形状の包丁があれば使いやすい」と使い手が近くの鍛冶屋に相談にいき、鍛冶屋がその要望に従って包丁を作る(自由鍛造と言います)。
その包丁がその地域で評判になり、○○包丁として普及する、という形で新しい包丁は生まれ定着していきます。
こんな歴史が各地であるものですから、用途ごとに様々な包丁が産まれるのは当然、同じ用途でも地方によって全く違う形状の包丁が存在しています。
例えばうなぎ裂き包丁は、うなぎを裂くという用途は同じ字でありながら、九州(九州裂きだけで2種あります)、京都、大阪、名古屋、関東と各地でその形状は全く違います。
※堺一文字光秀店頭では5種類ございますが、インターネットでは九州裂きは販売しておりません。
また、「使い手が欲しいと思った包丁が生まれる」ことは、現代でも変わっていません。
例えば、家庭用で最も一般的に使用されている三徳包丁が生まれたのは1940年代と言われており、意外にも最近です。肉料理が日本の家庭で食べられるようになったことで使われるようになった牛刀と、古くから日本で使われてきた出刃・菜切り包丁が組み合わさって生まれたのが三徳包丁と言われております。
形状だけに限らなければ、ステンレスやセラミックの包丁が生まれたのも、錆びない包丁がほしい、包丁の手入れが面倒、という使い手の要望があったからといえます。
既にたくさんの種類がある包丁ですが、その進化が止まることはなく、これからも使い手の要望に合わせて新しい種類が生まれ続けていくでしょう。
用途別包丁一覧
これからも新しく種類が生まれ続けていく包丁ですが、現在一般的に使用されているものはどのようなものがあるのでしょう。
用途ごとに代表的なものを表にまとめてみました。
珍しい包丁
代表的な包丁だけでもこれだけ種類が豊富なのですが、料理以外の用途に使われるものを含めると包丁の形状は数えきれないほど多いです。
堺一文字光秀で現在取り扱っている形だけでも80種類ありました。本舗店頭で販売する珍しい包丁を一部、見て頂きましょう。
※インターネットでの販売は行っておりません。ご希望の方はお問い合わせください。
丸包丁 布生地、レザー、クロスの切断に使われる包丁です。
畳包丁 畳を作る際、い草を切るための包丁です。
〆包丁 船の上などで魚の新鮮に保存するため、しめるために使う包丁です。
腸裂き包丁 牛の小腸に刺して裂くための包丁でしたが、大阪ではかしわ屋(鳥肉屋)で鳥の腸を切るためにも使われました。※現在内臓付きの鶏肉の処理には許可が必要なのでご注意ください。
紙裁ち包丁 紙裁ち包丁は障子紙や壁紙を切るのに使われていた包丁ですが、北海道のおぼろこんぶを切り出すのにちょうど良いと活用頂いたケースもあります。基本はしっかりと焼きの入った丈夫な刃ですので、形状を気に入って頂き、作り手が想像もつかない使い方に活用いただくことは珍しくありません。
かしわ出刃 鶏肉の骨や軟骨を叩き切るのに使われた包丁です。皮を剥ぐ際に直刃が便利なため、刃がまっすぐになっています。
塗師屋包丁 漆職人が固まった漆を切ったり、固まった筆を鉛筆のように削り出したりするのに使う包丁です。
螺鈿を切るのにも使います。
煎餅切包丁 せんべいを切るのに使われた包丁です。生地を割らないように刃が丸みを帯びています。
最初に買いたい包丁の種類は?
これだけたくさんの種類が多あると、どの包丁を買うか選ぶのは大変ですよね。
最初に何を買えばいいのか分からないという方は、まずこれを覚えておいてください。
家庭用はまず三徳、和食は柳刃・出刃・薄刃の基本の3本、和食以外は牛刀とペティの2本
ご家庭用であればまず三徳包丁があれば困りません。肉・野菜・魚どれを切るのにも使える万能包丁です。
和食であれば柳刃包丁/出刃包丁/薄刃包丁の3本、西洋料理など和食以外の料理であれば牛刀とペティが基本です。
それ以外の専門的な包丁であれば職場の先輩に先に必要な包丁を聞くのが無難です。
作業によって必要な形状があったり、場合によっては職場で指定されていることもあるでしょう。
包丁は用途に合わせて選ぶ、 一目瞭然!選び方フローチャート
最初に押さえておきたい基本の包丁をご紹介しましたが、その他の包丁を購入する際にはまず用途から包丁の種類を選びます。
代表的な種類をピックアップし、用途からの包丁(種類)の選び方を簡単にまとめてみました。
かなり大雑把に分かれており、実際には鋼材、仕上げ、サイズなど他にも要素がありますが、ぜひ参考になさってください。
オーダーメイドができるかも
ここまでたくさんの包丁の種類と初めに買いたい包丁、用途に合わせた包丁の選び方ことをご紹介しました。
包丁の種類はまさに無限で、今なお新しく生まれ続けています。
これは最初にお話した肉料理を作るようになったから、というような大きな文化の変化によって生まれるものだけではありません。
現在でも包丁屋さんのなかには、「こんな形の包丁が欲しい」という使い手の要望に応えて包丁をオーダーメイドしてくれるところがあります。
堺一文字光秀のオーダーメイドでは、厚みや幅、鋼材、形状が鋼材の条件と合えば完全オリジナルのものが作れます。
極端に分厚かったり、大きい包丁など元になる鋼材に合うものがない、洋包丁などそもそも一丁から作れないものはお断りするケースもありますが、「こんな形の包丁が欲しい」という場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
著者紹介About the author
堺一文字光秀
田中諒
「切れ味で、つなぐ」堺一文字光秀三代目当主。 職人の技術と歴史、そして包丁にかける思いを皆様に届けて参ります。 辻調理師専門学校 非常勤講師 朝日新聞社 ツギノジダイ ライター
- 監修
- 一文字厨器株式会社(堺一文字光秀)